Kaバンド*)を使って通信を行う用途向けには、小型のアップコンバータモジュール「HMC7053」を展示した。Lバンド(1GHz帯)を入力し、30GHzにアップコンバートする。温度補償機能が搭載されていることが特長だ。
*)Kaバンド:30GHz帯を使用した通信で、軍用と民生の両方で利用されている。小惑星探査機「はやぶさ2」もKaバンド用アンテナを備えている。
60GHz帯(55GHz〜66GHz)通信用の送受信チップセットは、アップコンバータICとダウンコンバータICで構成される。内蔵シンセサイザで64QAMに対応可能の他、外部LO(局部発振器)を使うことで256QAMまでの変調にも対応できる。スモールセルのバックホールや、基地局と交換局あるいはビル間などのポイント・ツー・ポイント通信といった用途を想定している。ADIによれば、500MHzの帯域幅で3.5Gビット/秒の通信が可能だという。
アンテナやネットワークの特性評価や、通信機器の開発向けに、キャリブレーションが不要なVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)測定のデモを行った。VSWR測定には、RFスイッチとパワーディテクタ(検波器)IC、検波したアナログ信号をデジタルに変えるA/Dコンバータを搭載したボードを使う。デモでは、シグナルジェネレータからの信号を双方向性カプラーに反射させて、VSWRを測定した。パワーディテクタIC「ADL6010」は、0.5GHz〜43.5GHzと広い帯域に対応する。A/DコンバータICは「AD7091R」で、分解能は12ビット、サンプリングレートは1Mサンプル/秒である。
ADIは、サンプリングレートが2.5Gサンプル/秒の高速12ビットA/DコンバータIC「AD9625」の同期サンプリングを行うデモを披露した。同期用クロックジェネレータICとして「HMC7044」を使った。
ここでポイントになるのは、AD9625とHMC7044がJESD204Bに対応していることだ。ESD204Bは、高速のA/DコンバータとD/Aコンバータを、FPGAなどの高速ロジックICに接続するためのシリアルインタフェースである。これまで、高速A/DコンバータとFPGAをつなぐにはLVDSなどのパラレルインタフェースが使われてきたが、信号線の本数が多くなることから、実装面積やレイアウトの点で課題が増えていた。
デモでは、2個のAD9625を使って同期サンプリングを行った。そもそも、毎秒ギガサンプルクラスのA/DコンバータICを同期させてサンプリングすることは非常に難しい。だが、ADIによれば、5G(第5世代移動通信)向けの技術として、大規模なフェーズドアレイアンテナで多チャンネルを正確に時間同期してサンプリングすることが求められるなど、ニーズは高まっているという。
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