Facebookが、VR(バーチャルリアリティー/仮想現実)の採用に向けて開発を加速している。それに伴い、ビットレートストリーミング技術や、動画のデータマイニングに向けた人工知能(AI)の開発に行っている。
全ての開発作業をオープンにすることで優位に立つのが、Facebookのやり方だ。これに対し、同社のライバルであるGoogleとAppleは開発作業を公開することはないが、Facebookと同じような研究を進めていると思われる。Facebookは、魅力的な情報を公表することで、パートナー企業からの注目を集め必要な資金を獲得したいと考えている。
Facebookは、2016年1月21日(米国時間)に本社で開催したイベント「Video @Scale」と同社のブログで、Facebookが進めるプロジェクトについて紹介した。その1つが、ユーザーがアップロードした360度の動画をキューブマップフォーマットに変換する技術だ。同社は、カスタムフィルター用のコードをGitHubに公開した。同フォーマットは、ファイルサイズを25%縮小できるという。
VR(バーチャルリアリティー/仮想現実)に関しては、具体的なコードの公開はなかったが、最新技術が発表された。VR用の360度動画を圧縮する際にピラミッド型の構造を利用することで、ファイルサイズを80%削減できるという。Facebookはこの他、VR体験を最適化する、ビュー依存に適応したビットレートストリーミング技術も発表した。
VRゴーグルを装着し、Facebookの投稿を閲覧/シェアして、よりリアルな喜び(時には嫌悪感)を体験できる日も近いかもしれない。
だが、当然ながら、サーバからリッチコンテンツを伝送するにはコストが掛かる。Facebookはその対策として、動画をデータマイニングして高いROI(投資利益率)を実現する人工知能(AI)の開発に着手しているという。
FacebookのVision Understandingチームは、画期的なAIアーキテクチャを発表した。同社は、「この技術が実現すれば、動画をチェックしなくても内容を把握したり、動画内で次に何が起こるかを予測したりできるようになる」と説明している。同技術は、物や場面、行動などをラベリングする代わりに、ボクセル(各動画のピクセル)を順次ラベリングしていくという。
同技術に関しては、プライバシーの問題が議論されるだろう。プライベートなボクセルデータがラベリングされ、メタデータ化されることについて、読者の皆さんはどう考えるだろうか。
Facebookは、360度動画やVR技術に関するこうした魅力的な技術の他に、動画をコード変換するための新しいストリーミングビデオエンジン(SVE)も発表した。同技術は、動画のアップロードから再生までの処理時間を10分の1に短縮できるという。Facebookの1日当たりの動画再生回数は80億回にまで増えているが、同社はサービスを中断することなく旧システムから全ての動画トラフィックを移行した。
Facebookは、「SVEは、動画全体を1つのファイルとして扱うのではなく、幾つかに分割して平行して処理することで、遅延を大幅に改善した」と説明している。
なお、FacebookやGoogleのような企業がAIの開発を進めていることで、米国シリコンバレーでは“人手不足”という問題が起こっているようだ。筆者は、NVIDIAのあるチーフサイエンティストが、「優秀なAI開発者はみんなFacebookかGoogleにとられてしまって、雇うことができない」と嘆いていたのを聞いたことがある。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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