両面に電極を持つ構造を印刷で作製するには、最初に電極の材料となる導電性のインクを表面に印刷する。その後、加熱してインクを焼成した上で、シートを裏返して裏面に印刷。その上で、裏面のインクを焼成するという手順が考えられる。しかし、この方法では加熱焼成を2回行う必要があり、インクの種類にもよるが短くても数分間の時間を要する。つまり、1回の熱処理で2つの電極を焼成できることが望ましいという。
今回は、産総研が開発した「スクリーンオフセット印刷法」を利用している。スクリーンオフセット印刷法は、転写体となるシリコーンゴムに所望のインクパターンをスクリーン印刷し、そのパターンをシリコーンゴム上から基材に写し取る手法である。
同センサーの作製では、シリコーンゴム上に下部電極となる導電インクをスクリーン印刷。その後、センサーの基材となるフィルムを押し付ける。さらに、このままの状態で表面に上部電極パターンを印刷し、フィルムをシリコーンゴムから剥がす。この時、裏面の電極パターンはシリコーンゴムからフィルム側に移る。最後に、両面のインクを一度の加熱で焼成して完成。これにより、容易にフィルム両面に電極パターンを形成できるのだ。
同センサーは、島根大学医学部附属病院と関連技術について実証試験を行う方向で検討を開始されている。産総研は、「今後は安全性や実用面を考量して、システムの小型化と無線化の検討を行っている。構造最適化などでセンサーをさらに高感度化して、心拍、脈拍の検出可能を目指す。単素子のセンサーを2次元的にアレイ化する技術を開発し、人の動きを3次元的に検出できる先進デバイスも開発していきたい」と語る。
将来的には、「これらの技術を完成させて、自宅での介護や見守りに向けて家庭内で運用できるシステムの構築に貢献していく」(産総研)としている。
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