MediaTekはその後、数年の遅れを取り戻すべく、猛烈な勢いでスマートフォン向けのプラットフォームを拡充させていく。MT6575(ARM Cortex-A9コア)、MT6577(同Cortex-A9コア✕2)、MT6589(同Cortex-A7コア✕4)と発売していく。プロセステクノロジーもQualcommやSamsungとほぼ同じペースで40nm、28nmを活用していく。ライバル各社がほぼ1年に1回チップセットを更新するのに対してMediaTekは、上記3チップでの更新間隔は、ほぼ数カ月おきと、数年の遅れを取り戻すべく、ハイペースであった。2014〜15年には通信機能のLTEも実現し、スマートフォン向けのプラットフォームとして、Qualcommにほぼ匹敵する最先端チップを提供できるメーカーへと完全に転じている。
図2はMediaTekのチップセットを活用し、最先端スマートフォンを提供する急成長する中国LeTVの端末「MAX」である。ターンキー時代と同じくMediaTekのチップだけで賄われている。このモデルでMediaTekは初めてチップにブランド名を与える。味気ない「MTxxxx」という名前から「helio」と名付けられたチップをリリースすることで、リーダーとしての風格さえも備わった。
2016年にはARMの最新CPUコアCortex-A72を頂点とする3階層のCPUコア構成(Cortex-A57+同A53)を持つ10コア製品「herio X20」もリリースされる予定だ。チップの仕様でも最先端をけん引するトップメーカーになっている。
図3は、同じくMediaTekのチップセットを活用したAmazonのタブレット端末「Fire HD6」である。かつて中国やアジアの山寨機のようなローカル市場のターンキーに過ぎなかったMediaTekの姿は、今や過去の記憶である。世界のトップメーカー(Amazonの他ソニー、Microsoftなど)にも採用されている。
インド、中国などの巨大市場にスコープを合わせ、インドのMicromaxなどと提携し、新たな端末コンセプト”ミッドハイ”を掲げるなど、絶え間ない努力を続けるMediaTekは、今後も注視が必要である。スマートフォン市場に陰りが出ている昨今MediaTekが次を見据えた変化を目標項目に入れていないはずがないからだ。MediaTekについては次回も引き続きテーマとして扱う予定である。
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ルネサス エレクトロニクスや米国のスタートアップなど半導体メーカーにて 2015年まで30年間にわたって半導体開発やマーケット活動に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見と経験を持っている。2015年から、半導体、基板および、それらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの上席アナリスト。テカナリエは設計コンサルタントや人材育成なども行っている。
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