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IoT機器のRoot of Trustはマイコンであるべきルネサス「Synergy」のセキュリティ戦略(2/2 ページ)

» 2016年03月02日 11時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]
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ネットワークのセキュリティは、あらゆる人々の問題に

 さらに、製品の過剰生産も防止できる。ファームウェアを暗号化する段階で、1)同ファームウェアを使用できる期間、2)同ファームウェアでプログラムできるマイコン数を設定できるので、例えば1000個製造すべきところを1万個量産し、過剰に生産した9000個を違法に販売する、といった不正行為はできなくなる。

「DLM」の仕組み。製造委託業者から、製造にかかわるIP(知的財産)を守る目的(左)と、不正なファームウェアのアップデートを防ぐ目的(右)の2つがある(クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 Carbone氏は、「これまでの組み込み機器は、故障品であれば新品と取り換え、新製品が発売されたらそれを購入するというのが一般的だった。だが、インターネットに接続できるスマートフォンのような製品が登場したことで、不具合の修正や新しい機能/サービス(アプリなど)の追加を、インターネットを介してソフトウェアで行うというビジネスが増えてきた。重要なのは、“どう安全性を確保しながら”そのビジネスを行うのか、ということだ。ネットワークにかかわるセキュリティ対策は、今や(IoT機器の開発や製造、使用にかかわる)あらゆる人々の問題となった」と強調する。「そのため、Synergyの開発では、企画段階から“セキュリティはSynergyの根幹となるもの”という認識を持っていた。Synergyは、マイコンを含めゼロから作り上げたプラットフォームなので、既存のセキュリティ技術や概念にとらわれず、まっさらな状態でセキュリティ機能を考え出すことができた。これは、ルネサスにとってはめったにない機会だったと思っている」(Carbone氏)。

Synergyに対する反応は?

Renesas Electronics EuropeのTim Burgess氏(左)と、Renesas Electronics AmericaのPeter Carbone氏

 Synergyのβ版の提供が始まったのは2015年10月だ。それから約4カ月が経過したが、顧客の反応はどうなのだろうか。

 Carbone氏は「予想以上の手応えを感じている」と語る。同氏によれば、現時点でSynergyを使用して製品開発プロジェクトを進めている顧客は、世界中で350社に上るという。開発キットの販売数は5000個を超え、ルネサスおよびパートナー企業のSynergy向けソフトウェアアドオンのダウンロード数は2万件に達した。ルネサスの欧州法人であるRenesas Electronics EuropeのIndustrial & Communication Business Group Marketing Head of Unitを務めるTim Burgess氏は、「Synergy関連のセミナーを開催すると、毎回満席になるどころか、登録者以上の参加者が来る」と話し、米国だけでなく欧州でも、Synergyへの関心は高いと話した。

 とりわけ、ソフトウェアライセンス使用料を削減できる点が、顧客/潜在顧客の興味を引くようだ。Carbone氏は「大手企業も中小企業も、ライセンス契約の締結にかなりの時間とコストを割いている。その点、Synergyは1クリックで、ライセンス契約が済み、ダウンロードをスタートできる」と説明する。

 収益性についてCarbone氏は、「ルネサスの中でも、恐らく最も収益性の高い製品に位置付けられるようになるのではないか」と自信をみせる。同氏は、数値は明らかにしなかったものの、「Synergyの(一定期間における)利益は、最小の予測値よりも20%上回るとみている」とコメントした。なお、ルネサスで汎用事業を統括する執行役員常務兼第二ソリューション事業本部長の横田善和氏は、2015年12月に開催された同社のプライベート展示会「Renesas DevCon Japan 2015」で、Synergyの売り上げ目標について「2015年12月の販売開始から5年以内に累計800億円」と述べている*)

*)関連記事:ルネサス横田氏が語る、Synergy/R-INの未来

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