2015年、SiTimeがキロヘルツXOで躍進した理由の1つが、2013年にサンプル出荷を開始した新製品の存在だ。タイミングデバイスの新たな用途市場であるウェアラブル機器市場の立ち上がりという追い風を受けて、新製品群の採用が大きく伸びた。
ウェアラブル機器は、他の用途よりも、小型化、低消費電力要求が強い。そうした中で、新製品である「SiT153xシリーズ」、強いてはMEMS発振器の特長が市場のニーズにうまく合致した。
まず新製品の外形サイズは1.5×0.8mm。現状、量産段階にある水晶のXOのサイズは1.6×1.0mmだ。それよりも一回り小さい上に、水晶のXOでは必須の2個の外付けコンデンサーがMEMS XOでは不要で、「回路サイズとしては70%以上縮小できる」という利点がある。
そして消費電力についても、「競合の水晶の消費電流1.5μAに対し、MEMSは0.75μAと半分程度」と大きなアドバンテージを持つ。
気になる精度、周波数安定性については、室温で20ppmと水晶と同等。全温度範囲での周波数安定性は水晶の160ppmに対し、100ppmと上回るという。その他、耐衝撃、耐振動性についても水晶を上回るとしている。
価格については、詳細を明かしていないが、「ウェアラブル機器のトップメーカー5社のうち4社がキロヘルツXOについては、当社のMEMS発振器を採用している。その点でも、水晶に対しわれわれのMEMS発振器が価格競争力を十分持ち合わせていることを理解してもらえるだろう」(Sevalia氏)と語る。
トップメーカー5社のうち4社が採用するというウェアラブル機器市場におけるキロヘルツXOのMEMS発振器のシェアは現状、「60%ぐらいだろう。われわれのMEMS発振子を使用した製品を展開する水晶発振器メーカーも複数存在するまでに至っている」(Sevalia氏)。少なくとも、ウェアラブル機器のキロヘルツXO領域では、水晶にシリコンが勝るという変化が生じているというのだ。
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