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新製品攻勢でタイミング市場に変化を起こすSiTime真空管、フィルム、HDDの次は水晶だ(3/4 ページ)

» 2016年03月10日 09時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

次のターゲットは、TCXO、メガヘルツ……

 そしてSiTimeは、シリコンが水晶に勝る領域を着実に増やそうとしている。次のターゲットは、キロヘルツTCXO(温度補償型水晶発振器)領域やメガヘルツXO領域。いずれも、精度面などでMEMS発振器が水晶に及ばないとされてきた領域だ。

ウェアラブル/モバイル/IoT機器に向けたSiTimeの製品ラインアップ (クリックで拡大) 出典:SiTime

 XOよりも周波数安定性が優れるTCXOは、ウェアラブル機器をはじめとした無線機能を搭載しつつ、消費電力低減が迫られる用途で需要が伸びる。その理由は、クロックの安定性が無線機能などのスリープ時間を長くできるからだ。発振器の周波数安定性が劣れば、正しいタイミングで確実に起動させるため、クロックの誤差を考慮して、早めに無線モジュールのスリープモードを切り上げて、起動させなければならない。逆に正確なクロックの供給が保証されているのであれば、ギリギリまで消費電力の小さいスリープモードを継続できる。SiTimeの試算では、50秒の間隔で起動させる場合、全温度範囲の周波数安定性が200ppmのXOを使用時には10ミリ秒程度のマージンを持たせた早期起動が必要になるが同5ppmのTCXOであれば、0.25ミリ秒のマージンで済むという。消費電流換算にすると、TCXOを搭載することで、3割程度の削減が見込めることになる。

周波数安定性の違いで生じる無線モジュールの平均消費電流差のイメージ。スリープ時間が長い動作ほど、周波数安定性が高いほど低消費電流効果が得られる (クリックで拡大) 出典:SiTime

 SiTimeは、ウェアラブル機器市場などで需要が伸びるMEMS発振器によるキロヘルツTCXO「SiT1552」の量産をこのほど、開始した。水晶ベースのTCXOと同様、−40〜85℃の全温度範囲で5ppmの周波数安定性を実現した。さらに、パッケージサイズはXO同様、1.5×0.8mmと小さく、1μA以下の消費電流と、MEMS発振器の利点を維持している。

 さらに、「水晶ベースのTCXOではできないMEMS TCXOの長所が市場での支持を広げている」という。その長所とは、出力周波数がプログラマブルという点だ。「ウェアラブル機器など消費電力を少しでも削減したい用途では、システム全体の低消費電力化を狙って、システムクロックを最低限に抑える手法が採用されている。水晶では、32.768kHz固定であり、周波数変換器が必要になる。その点、MEMSであれば、1チップで良い」(Sevalia氏)。

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