データ転送速度と消費電力、製造コスト(価格)でDDR系列やLPDDR系列などを含めたDRAM技術とHBM技術を比べてみよう。
HBM技術はデータ転送速度が極めて高いにもかかわらず、消費電力はDDR4とあまり変わらない。消費電力効率の高さがHBM技術の特長である。ただし、製造コスト(価格)はかなり高い。DDR4タイプよりもはるかに高いのはもちろんのこと、低消費電力タイプのLPDDR4タイプやWide IO2タイプなどと比べても、かなり高くつく。
ここからは話題を埋め込みDRAM(eDRAM)に転じよう。eDRAM技術はロジックとDRAMの混載を狙ったデバイス技術である。主に一部のCPUシステムで、ラストレベルキャッシュ(LLC:主記憶に最も近い階層のキャッシュ)に使われてきた。SRAMに比べると記憶容量当たりの製造コストが低いので、eDRAM技術は大容量キャッシュに適している。
次世代のCPUシステムを想定したとき、HBMのような3次元DRAM技術ではなく、eDRAM技術を活用することも考えられる。しかしRob Aitken氏は、eDRAM技術は普及せず、ニッチな存在にとどまると予測する。
講演ではその理由をいくつか挙げていた。最初の理由は、ロジックとDRAMでは最適な製造プロセスが異なることである。DRAMに最適化したプロセスではロジックの性能が下がる。逆に、ロジックに最適化したプロセスではDRAMの性能が下がる。両方に適したプロセスだと、製造コストが上昇してしまう。
またSRAMと異なり、DRAMにはリフレッシュ(定期的なデータ再書き込み)が存在する。eDRAMは市販品が存在しないので、eDRAMキャッシュの設計者はリフレッシュを取り扱わなければならない。これは設計作業をかなり複雑にする。
そしてコストの問題がある。記憶容量当たりのコストでは、市販のDRAMに比べるとeDRAMは非常に高くなる。eDRAMのシステムが性能で圧倒的に優位に立たない限り、採用は難しい。
(次回に続く)
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