SRAMの設計課題は大別すると、高密度化と低消費電力化の2つに分けられる。高密度化を支えるのは、主に加工技術の微細化である。ただし単純にサイズを小さくすると、電流のばらつきが相対的に大きくなり、リーク電流が増加する。そしてメモリセルの雑音余裕(SNM:Static Noise Margin)が低下する。設計技術の工夫によってこれらの問題に対処しなければならない。
低消費電力化を支えるのは、電源電圧(Vmin)を下げることである。ただし単純に電源電圧を下げると、書き込み余裕が減り、読み出しの雑音余裕(SNM)が減り、データ保持時間が短くなる。それだけではなく、書き込み不良、読み出しディスターブ不良、アクセス不良、データ保持不良といった不良の発生確率が増加する。
電源電圧(Vmin)の最小値は大抵、書き込み不良あるいは読み出しディスターブ不良によって決まる。電源電圧を下げていくと通常は、どちらかの不良が目立ち始めることで、電源電圧をそれ以下には下げられなくなる。書き込み不良と読み出しディスターブ不良のどちらが支配的であるかを予測することは難しい。ただし50nm以下に微細化した領域で作製したシリコンではしばしば、書き込み不良が電源電圧を制限するという結果が出ている。
読み出しディスターブ不良を軽減する代表的な手法は、メモリセルのアーキテクチャを変更することである。SRAMの一般的なメモリセルは6個のトランジスタで構成されている。トランジスタを増やして8個のトランジスタでメモリセルを構成すると、読み出しディスターブ不良が起こりにくくなる。ただし、メモリセルのシリコン面積は拡大する。すなわち記憶容量当たりの製造コストが増加するとともに、高密度化を妨げる。
書き込み不良を軽減することは、非常に難しい。研究論文レベルではさまざまな手法が提案されている。しかし製品化された一般的な手法というレベルには至っていない。
(次回に続く)
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