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磁気メモリが「不揮発性メモリ」であるための条件福田昭のストレージ通信(27) 次世代メモリ、STT-MRAMの基礎(5)(1/2 ページ)

磁気メモリは、記憶したデータを必ずしも安定して保持できるわけではない。今回は、10年以上にわたりデータを保持する不揮発性メモリとして、磁気メモリを機能させるための条件を解説する。

» 2016年05月09日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

異方性エネルギーの大小が記憶の安定性を左右

 国際会議「IEDM」のショートコースでCNRS(フランス国立科学研究センター)のThibaut Devolder氏が、「Basics of STT-MRAM(STT-MRAMの基礎)」と題して講演した内容を紹介するシリーズの第5回である。

 前回は、磁気メモリにおける記憶と書き換えの基本原理である、磁性体(強磁性体)の交換相互作用を解説した。また磁気記録の黎明期をごく簡単に振り返った。

 今回は、磁気を利用して記憶したデータの値を不安定にする要因と、10年以上の期間にわたってデータを安定に保持するための条件を解説する。

 本シリーズの第3回では、磁性体の磁気異方性(「磁化異方性」とも呼ぶ)を利用してデータを記憶していることを説明した。説明図面を再掲しよう。

交換相互作用(左)と磁気異方性エネルギー(右) 出典:CNRS

 磁気異方性とは、磁性体内部に磁化が容易な方向と、磁化が困難な方向が存在する性質を指す。内部エネルギーで表現すると、磁化が容易な方向(磁化容易方向)は内部エネルギーが低く、磁化が困難な方向(磁化困難方向)は内部エネルギーが高い。

 磁化容易方向を0度とした平面上で磁化の方向を360度(0度)まで回転させると、磁化困難方向は90度と270度、磁化容易方向は0度と180度になる。ここで磁化の方向を0度あるいは180度に保持することで、2値(1ビット)のデータを記憶する。これが磁気記憶および磁気記録の基本原理である。

 2つの磁気容易方向の間には、磁化困難方向という高いエネルギー状態が存在する。このエネルギー障壁を乗り越えることで、データを書き換える。

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