佐竹製作所発ベンチャーのタッチエンスは2016年5月、クラウドファンディングサイト「Makuake」で、スポンジ型センサーを用いたミュージックギアの資金調達を開始した。同社取締役でセンサー事業統括を行う丸山尚哉氏に、エンターテインメント向けに展開する狙いを聞いた。
「こんなに“もふもふ”しているセンサーは見たことがない」――
2016年4月に幕張メッセで開催された「TECHNO-FRONTIER 2016(テクノフロンティア 2016)」で、佐竹製作所発ベンチャーのタッチエンスは、3次元方向の検出ができるスポンジ型センサーを展示した。あまりの“もふもふ”さに衝撃を受けて、当時書いた記事のタイトルに、そのまま“もふもふ”を使ってしまったほどだ。
そのタッチエンスが2016年5月、クラウドファンディングサイト「Makuake」で、楽器デザイナーの中西宣人氏とともに、スポンジ型センサーを用いた電子楽器「CMG」の資金調達を開始した(同年6月7日現在、既に目標調達額の80万円を超えた)。
4月の取材当時では、用途として人と多く接触する民生用ロボットのヒューマンインタフェースを挙げていたスポンジ型センサー。なぜ、エンターテインメント向けの展開をするのか、同社取締役でセンサー事業統括を行う丸山尚哉氏に聞いた。
CMGは、スポンジ型センサーを16個搭載したパッドに、なぞる/押す/たたくといったアクションを加えることで、音のコントロールができるMIDIコントローラである。
楽器のピッチやボリューム、ハーモニーなどをXYZ軸で再現できるだけでなく、ギターやシンセサイザーのエフェクター、DJコントローラーなどの演奏を楽しむことができるという。機器側面には5つのボタンがあり、シーケンスモード/プレッシャーモード/タップモード/マルチタッチモードが選択可能だ。
また、ハードウェアの使い方をカスタマイズすることもできる。そのため、LEDの点灯パターンやセンサー出力の利用方法をプログラミングすることで、好みにあった音楽機材を創ることが可能である(下記の動画が分かりやすい)。
タッチエンスは開発メンバーに音楽愛好家がいたことから、2015年9月にもスポンジ型センサーを搭載した電子楽器「モニサンプル」を開発し、Makuake上で資金調達を行った。モニサンプルは、“もにもに”触って楽しむタイプの電子楽器である。しかし、プロジェクトは失敗し、モニサンプルも全く売れなかったという苦い思い出がある。
一方、テレビ東京の「ワールドサテライトビジネス(WBS)」の「トレたま」コーナーで、モニサンプルが取り上げられたことから、中西氏からスポンジ型センサーを用いた新しい電子楽器の開発に関するコンタクトがあったという。丸山氏は当時を振り返って、「電子楽器の開発をやり直すほどのやる気は正直なかったが、中西氏が開発する楽器の見せ方や、プレゼンテーションの魅力に大きな可能性を感じた」と語る。
丸山氏は「CMGが見据えるのは、あくまで海外市場」とする。Makuakeでの資金調達は、事前のマーケティング的な意味合いも大きい。プロジェクト公開後の評判も良く、2016年9月頃から国内で一般販売を始め、同時に海外展開も進めていくつもりだ。
タッチエンスが“ないやる気”を起こしてまで、CMGを開発するのは中西氏との出会いだけが理由ではない。そこには、スポンジ型センサーが抱える“ある課題”が存在する。
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