「IMEC Technology Forum(ITF) 2016」では、半導体業界の将来に関する基調講演やインタビューが多数行われた。GLOBALFOUNDRIESのCTOを務めるGary Patton氏は、「2年ごとにコストを35%ずつ下げ、性能を20%ずつ上げることのできた時代は20nmプロセスで終わった」と述べる。
ベルギーのブリュッセルで開催された「IMEC Technology Forum 2016」(2016年5月24〜25日)では、半導体技術のロードマップやIoT(モノのインターネット)など業界をけん引する技術に関して、さまざまな見解が示された。ことしのIMECでは、例年よりも明確な意見が多かった。
IMECの講演とインタビューでは、微細化に関する課題や疑問点が明確に解説され、半導体技術の進化が終わりを迎えるのではないかという不安もいくぶんか和らげられた。残念なことだが、近年、こうした講演やインタビューでは扇動的な表現がよくみられるが、GLOBALFOUNDRIESでCTO(最高技術責任者)を務めるGary Patton氏も、次のような言葉で講演の口火を切った。
Patton氏は、IMECの参加者に対して、「微細化は急激に減速している。現状、プロセスノード名はマーケティングツールにすぎず、価値を提案できるものではなくなりつつある」と述べた。
同氏は、「2年ごとにコストを35%ずつ下げ、性能を20%ずつ上げることのできた時代は20nmプロセスで終わった。20nm以降は、ダブルパターニングが必要となり、コストが大幅に上昇した。FinFETの導入によって14nm/16nmを実現したとしているが、これは単なる改良だ」と今日の最先端プロセスの“捉え方”を批判した。
同氏はこれにとどまらず、「当社のライバル企業であるTSMCやSamsung Electronicsは10nmプロセスの実現で競い合っているが、これはどちらかといえばハーフノードだ。14nm/16nmプロセスを基準にして考えると7nmプロセスではフルノードプロセスとしての希望が持てる」と述べた。
Infineon TechnologiesでCEO(最高経営責任者)を務めるReinhard Ploss氏は、Patton氏が講演した同じ日の午後、「ムーアの法則」の概要について講演した。同氏は、「遅かれ早かれ、ごくわずかな微細化を実現するために、信じられないほどの労力を投入しなければならなくなる」と語った。
プロセス技術のスペシャリストで、Qualcommのグローバルオペレーション部門でシニアバイスプレジデントを務めるRoawen Chen氏も、「これまでよりも懸命に開発に尽力しても、消費電力や性能、価格、寸法などをわずかに向上させることしかできなくなっている」と述べている。
Chen氏は、「最先端プロセスを導入する時に用いる、ファウンドリーのPDK(プロセス開発キット)は、バージョン間(1.0と2.0など)の差は次第に大きくなっている。将来的な技術の進展を予測しにくいことが業界の遅れを助長し、新プロセス導入のリスクも高まっている」と指摘した。
一方、機器メーカーのASM InternationalでCTOを務めるIvo Raaijmakers氏は、少し楽観的な見解を示した。同氏は、「半導体業界は、従来のCMOSスケーリング(Dennardスケーリング)とは違った形で、微細化を継続する方法を模索していくだろう。新しい技術の開発は進んでおり、微細化の速度と比率が低下しても、これは下方スパイラルではない。次のプロセスへの移行が2年ごとから3年ごとに変わるなど、そういった類いの話だ」と述べた。
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【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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