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課題が残る、クルマ用SSDの熱管理福田昭のストレージ通信(40) Micronが考えるメモリシステムの将来(4)(1/2 ページ)

今回は、「M.2」のSSDの熱管理について解説する。SSDを構成する半導体の温度上昇をシミュレーションしてみると、周囲の温度が25℃と室温レベルでも、半導体チップの温度は90℃前後にまで上昇することが分かった。

» 2016年07月12日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

デバイス周囲の温度変化とデバイスの発熱による温度変化

 「国際メモリワークショップ(IMW:International Memory Workshop)」のショートコースで、Micron TechnologyのFellowであるWill Akin氏が、「Memory System Overview」と題してメモリシステムの現状と将来を用途別に解説した。その内容を紹介するシリーズの第4回である。

 前回は、SSD(Solid State Drive)をクルマに搭載するときの課題を説明した。大きな課題として、クルマでは高い温度環境下での動作が求められることを示した。また最後に、SSDにはさまざまなフォームファクタ(規格化された外形寸法)が存在することを述べた。今回は、最も小さなフォームファクタである「M.2」のSSDを取り上げて熱管理の実際を解説する。

 SSDの温度上昇は、2つの観点から考慮しなければならない。1つは、SSD内部のデバイス(NAND型フラッシュメモリやメモリコントローラーなど)による発熱である。もう1つは、デバイス以外の原因による、SSDの周囲温度の上昇である。いずれにしてもデバイス(特にNANDフラッシュメモリ)の温度上昇は、データ保持期間の短縮や書き換え不良の増加などを招く。

 こういった問題に対処するには、熱設計(熱管理)が必須となる。例えばSSDの動作を間欠的に実行することで、放熱期間を設ける。あるいはヒートスプレッダやヒートシンクといった放熱部品をSSDに取り付ける。

SSDおよびフラッシュストレージの主なフォームファクタ(再掲) (クリックで拡大) 出典:Micron Technology

SSDを構成する半導体の温度上昇を測る

 講演では、最も小さなフォームファクタである「M.2」タイプのSSDを例に、ノートPCに組み込んだ状態で動作させて半導体パッケージの温度を測定してみせた。SSDの動作を高速状態と低速状態に分けて両者の状態を繰り返し、温度上昇を抑えようと試みた。

「M.2」タイプのSSDをノートPCに組み込んだ状態。PC本体の最上部あるいは底部に配置されている。放熱を担う空気の流れが制限されているため、このようなレイアウトとなる(クリックで拡大) 出典:Micron Technology

 SSDの動作は、高速状態がおよそ1500Mバイト/秒、低速状態が50Mバイト/秒以下である。SSDの記憶容量は512Gバイト。動作はシーケンシャル書き込みのみ。この条件で、ASIC(コントローラー)とNANDフラッシュメモリ(左(L)側と右(R)側の2つ)、DRAMバッファのパッケージ温度と、SSDの平均的な書き込み速度をモニターした。

 温度上昇が最も激しいのはASIC(コントローラー)である。パッケージの温度は初期値の60℃弱から、100℃前後にまで上昇した。次いでDRAMバッファの温度上昇が激しい。初期値の約40℃から、80℃まで上昇した。NANDフラッシュメモリは差が大きく出た。左(L)側のNANDフラッシュはDRAMバッファとほぼ同じように温度が上昇した。これに対して右(R)側のNANDフラッシュは温度があまり上昇せず、最大温度は40℃にとどまった。また、平均的な書き込み速度は417Mバイト/秒となった。

ノートPCに組み込んだ:「M.2」タイプのSSDを動作させたときの各半導体の温度変化。出典:Micron Technology
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