今回は、「M.2」のSSDの熱管理について解説する。SSDを構成する半導体の温度上昇をシミュレーションしてみると、周囲の温度が25℃と室温レベルでも、半導体チップの温度は90℃前後にまで上昇することが分かった。
「国際メモリワークショップ(IMW:International Memory Workshop)」のショートコースで、Micron TechnologyのFellowであるWill Akin氏が、「Memory System Overview」と題してメモリシステムの現状と将来を用途別に解説した。その内容を紹介するシリーズの第4回である。
前回は、SSD(Solid State Drive)をクルマに搭載するときの課題を説明した。大きな課題として、クルマでは高い温度環境下での動作が求められることを示した。また最後に、SSDにはさまざまなフォームファクタ(規格化された外形寸法)が存在することを述べた。今回は、最も小さなフォームファクタである「M.2」のSSDを取り上げて熱管理の実際を解説する。
SSDの温度上昇は、2つの観点から考慮しなければならない。1つは、SSD内部のデバイス(NAND型フラッシュメモリやメモリコントローラーなど)による発熱である。もう1つは、デバイス以外の原因による、SSDの周囲温度の上昇である。いずれにしてもデバイス(特にNANDフラッシュメモリ)の温度上昇は、データ保持期間の短縮や書き換え不良の増加などを招く。
こういった問題に対処するには、熱設計(熱管理)が必須となる。例えばSSDの動作を間欠的に実行することで、放熱期間を設ける。あるいはヒートスプレッダやヒートシンクといった放熱部品をSSDに取り付ける。
講演では、最も小さなフォームファクタである「M.2」タイプのSSDを例に、ノートPCに組み込んだ状態で動作させて半導体パッケージの温度を測定してみせた。SSDの動作を高速状態と低速状態に分けて両者の状態を繰り返し、温度上昇を抑えようと試みた。
SSDの動作は、高速状態がおよそ1500Mバイト/秒、低速状態が50Mバイト/秒以下である。SSDの記憶容量は512Gバイト。動作はシーケンシャル書き込みのみ。この条件で、ASIC(コントローラー)とNANDフラッシュメモリ(左(L)側と右(R)側の2つ)、DRAMバッファのパッケージ温度と、SSDの平均的な書き込み速度をモニターした。
温度上昇が最も激しいのはASIC(コントローラー)である。パッケージの温度は初期値の60℃弱から、100℃前後にまで上昇した。次いでDRAMバッファの温度上昇が激しい。初期値の約40℃から、80℃まで上昇した。NANDフラッシュメモリは差が大きく出た。左(L)側のNANDフラッシュはDRAMバッファとほぼ同じように温度が上昇した。これに対して右(R)側のNANDフラッシュは温度があまり上昇せず、最大温度は40℃にとどまった。また、平均的な書き込み速度は417Mバイト/秒となった。
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