このシリーズを始めて以来、「鉄道を使った自殺は、他の自殺より“軽い”ような気がする」という印象を拭えずにいます。そこで今回、なぜ“軽い”と感じるのか、それを具体的に検討してみました。
「世界を『数字』で回してみよう」現在のテーマは「人身事故」。日常的に電車を使っている人なら、一度は怒りを覚えたことがある……というのが本当のところではないでしょうか。今回のシリーズでは、このテーマに思い切って踏み込み、「人身事故」を冷静に分析します。⇒連載バックナンバーはこちらから
本連載について、メールで、簡単なアンケートなどに応じていただける方を募集しております。
こちらのメールアドレス(one-under@kobore.net)に『アンケートに応じます』とだけ書いたメールを送付していただくだけで結構です(お名前、自己紹介などは必要ありません)。ぜひ、よろしくお願い致します。
なお、アンケートにご協力いただいた方には、江端の脱稿直後の(過激なフレーズが残ったまま?の)生原稿を送付させていただくという特典(?)がついております。
もう10年以上にもなるでしょうか、私は会社で「傾聴」をテーマとした、主任向けの研修を受け(させられ)ていました。その日は「自分の性格を分析する」というテーマで、研修を受けていた全員に1つのテーマが出されました。
『帰宅時に、駅のホームで泥酔して駅のホームを、ふらふらと歩いている男性を見ました。あなたは、この男性に対してどうしますか?』
研修生の多くが、「ホームから転落しそうになったらすぐつかめるよう、その男性の側を歩く」とか、「『危ないですよ』と注意する」などの意見を出す中、私だけは異なる見方を持っていました。
「その男性をずっと見守って、ホームに落ちていく様(さま)を、じっくりと観察する」
酔客がホームに落ちていく様子など、そうそう見られる光景ではありません。
そして、この観察は、鉄道の人身事故を防止するシステムを考案する研究員として、得難いチャンスでもあります 。
―― と、その理由を丁寧に説明したものの、
教室は水を打ったように静まり返り、研修者(講師も含めて)、全員がドン引きしているのが感じられました。
あ、これはマズい ―― と、機敏に空気を読んだ私は、慌てて付け加えました。
「あ、そうそう私と帰宅方向と同じホームに落ちていくかもしれない場合は、殴り倒してでも、その男性がホームから落ちるのを止めますよ。帰宅の電車を止められたら、困りますからね、はっはっはっ」
と、軽いジョークをかましてフォローしたつもりだったのですが ―― 教室の空気をさらに凍らせただけでした。
そして、その後、その研修は、ずっと盛り下がったままでした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.