今回は、7nm世代以降の半導体製造プロセスで使わざるを得なくなるだろう「自己整合(セルフアライン)的なリソグラフィ技術」に触れる。その候補は3つ。東京エレクトロンのBen Rathsack氏が、3つの候補技術の現状を紹介した。
半導体製造装置と半導体製造用材料に関する北米最大の展示会「SEMICON West 2016」が2016年7月12日〜14日に米国カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーンセンター(Moscone Center)で開催された。同12日には「FORUM」(フォーラム)と称する併設の講演会があり、専門テーマに関する解説や展望などを数多くの研究者や技術者、経営者などが発表した。
中でも興味深かったのは、「Lithography: Charting a Path, or Paths, Between Nodes 10 and 5」と題する専門フォーラムである。次世代のリソグラフィ技術を展望するフォーラムだ。前回はこのフォーラムから、Nikon Research Corporation of AmericaのDirector of Comutational Imagingを務めるStephen Renwick氏の講演の概要をご紹介した。
今回は同じフォーラムから、東京エレクトロンのProduct Technology and Marketing担当ディレクターを務めるBen Rathsack氏の講演概要をご報告する。講演タイトルは「Self-Aligned Patterning Technologies for N7 and N5」である。
講演タイトルにある「N7」すなわち7nm世代と「N5」すなわち5nm世代は「セルフアライン」、言い換えると自己整合的なリソグラフィ技術を使わざるを得なくなる。その候補は3種類ある。
1つは既存技術の延長である、ArF液浸のセルフアライン(自己整合)型マルチパターニング(SAMP)である。もう1つはEUV(極端紫外線)リソグラフィの自己整合型ダブルパターニング(SADP)だ。EUVでもシングルパターニングでは10nm未満の微細な世代は解像しにくい。最後は、誘導自己組織化(DSA)である。これらの候補技術についてBen Rathsack氏は現状を紹介した。
ArF液浸のSAMP技術は、1次元(1D)のパターニングとカット技術を組み合わせた「コンプリメンタリ・リソグラフィ」へと移行する。ArF液浸のシングルパターニングによって始めに緩やかで平行な直線パターン(ライン・アンド・スペース)を形成し、その後、自己整合マルチパターニングによって微細な平行直線パターンを形成する。
マルチパターンとして想定されているのは、ダブルパターニングから、サイズをシングルパターニングの8分の1に縮小するSAOP(セルフアラインドオクタルパターニング)までである。例えば44nmのライン・アンド・スペースをシングルで形成すると、SAOPによって5.5nmと極めて微細なライン・アンド・スペースを形成可能になる。
平行直線パターンを形成した後は、カットパターン(直線群に直交するパターン)を形成する。カットパターンは直線の切断部分や、多層配線の層間接続用ビア部分になる。このカットパターンの形成にはArF液浸のほか、EUVリソグラフィが考えられている。
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