NXPのClemmer氏が今回、同社が機械学習分野において後れを取っているとコメントしたことから、自動車市場に驚きが広がった。
問題は、機械学習だけではない。NXPは、この他にもAIやコンピュータビジョンなどの分野において、どの程度まで研究および製品開発を進めているのだろうか。Demler氏はEE Timesのインタビューに対し、「AIや機械学習、コンピュータビジョンなどの分野の課題は全て、1つにまとめることができる」と述べている。
同氏は、「NXPが保有する、旧Freescaleの『S32V234』プロセッサは、CognivueのコンピュータビジョンIPコアを統合している」と指摘する。Cognivueは、NXPに買収される前、旧Freecaleが買収した企業だ。
一方のQualcommは、CPUとGPU、DSPコアを組み合わせた独自のディープラーニングプラットフォーム「Zeroth」を有している。
Demler氏は、「CognivueとFreescaleは既に、車載市場で実績がある。問題は、顧客がS32V234を採用したかどうかだ」と付け加えた。
Krewell氏は、QualcommのZerothプラットフォームと同社の機械学習研究プロジェクトについて、「Qualcommは、機械学習が自動運転車やスマートデバイスにとって不可欠な要素になりつつあることを理解している点で、NXPより先んじている」と述べている。
ただし、同氏は「今回の買収に伴う作業の方により多くのリソースが割かれ、機械学習分野でのQualcommの成果が遅れるのではないかと懸念している」と述べている。
Webber氏は、Qualcommのビジョンテクノロジーについて、「車載向け技術は何も発表していない。しかし、Googleの開発者会議議『Google I/O 2015』では、深度センシングをベースとした独自のコンピュータビジョン向けレファレンス設計を適用した、Snapdragon搭載スマートフォンを発表している。Qualcommは、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)の開発に注力している」と述べている。
一方、Demler氏はより楽観的な見解を示している。組み込みコンピュータビジョンは、汎用プロセッサコアと専用のビジョンアクセラレータを組み合わせて構築するのがトレンドだ。「つまり、QualcommとNXPは統合によって、両社の最良のIPを活用できるようになる」と述べている。
V2X向け無線周波数帯をめぐる争いは、2つの陣営に分かれる。「IEEE 802.11p」規格をベースとするDSRC陣営とLTE陣営だ。
欧州で始まったV2Xの周波数争いは、中国でも起こっている。中国は世界で最も重要な新興車載市場の1つだ。
Qualcommは、NokiaやEricsson、Huaweiなどの通信機器大手と共に、LTEベースのV2Xを主導してきた。
だが、Demler氏は懐疑的な見方をしている。「QualcommはLTE-V2Xの構想を持っている。同社はLTEモデムのリーダー的存在であり、可能な限りLTEモデムの利用を促進したい考えだ。だが、LTE-V2Xは、既に実績のあるDSRC技術に対抗する規格だ。DSRCは、1999年に米国連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)からITS(高度道路交通システム)用に5.9GHz帯を割り当てられている」と説明している。
Demler氏は、「スマート交通システムにはLTEも使われているが、業界全体や標準規格グループ、政府機関はQualcommの構想に賛同するとは思えない」と述べている。
Strategy Analyticsでアソシエートディレクターを務めるRoger Lanctot氏は、異なる見解を示している。
同氏は、V2Xの周波数帯争いは結局のところ、複雑に絡み合ったパートナーシップのもつれによる問題だと考えている。
例えば、「QualcommはDSRCのチャネル割り当て問題に関してCisco Systemsと複雑な関係性にある」とLanctot氏は指摘している。
NXPは、DSRCベースのV2X技術を推進しているが、この立ち位置はNXPがCohda Wirelessに投資することで、より強化された。そしてCohdaは、Qualcommがサポートする5G(第5世代移動通信)の技術について実証実験している。Lanctot氏は、「オバマ政権がV2X技術を義務化しようとしまいと、V2X技術はこのまま進化していくだろう」と述べる。「その進化は、LTEの進化版である5Gや、DSRCベースの専用デバイスによって支えられていくだろう」(同氏)。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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