今回から「抵抗変化メモリ(ReRAM)の研究開発動向」の本格的な解説に入る。まずは、過去の国際学会で発表された論文から、ReRAMの材料組成の傾向をみていく。
半導体メモリの研究開発に関する国際学会「国際メモリワークショップ(IMW::International Memory Workshop)」のショートコース(2016年5月15日)から、SanDiskによる抵抗変化メモリ(ReRAM)の研究開発動向に関する講演概要をご紹介している。今回はシリーズの5回目に相当する。
抵抗変化メモリの開発動向バックナンバー: | |
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(1) | SanDiskが語る、半導体不揮発性メモリの開発史 |
(2) | SanDiskが語る、コンピュータのメモリ階層 |
(3) | SanDiskが語る、ストレージ・クラス・メモリの概要 |
(4) | SanDiskが語る、ストレージ・クラス・メモリの信頼性 |
(5) | SanDiskが語る、抵抗変化メモリの多様な材料組成【今回】 |
講演者はスタッフエンジニアのYangyin CHEN氏、講演タイトルは「ReRAM for SCM application」である。タイトルにあるSCMとはストレージ・クラス・メモリ(storage class memory)の略称で、性能的に外部記憶装置(ストレージ)と主記憶(メインメモリ)の間に位置するメモリとされる。ここで性能とは、メインメモリよりもコスト(記憶容量当たりのコスト)が低く、ストレージよりも高速であることを意味する。
本シリーズの4回目である前回は、メモリ階層におけるSCM(ストレージ・クラス・メモリ)が要求される仕様をご紹介した。今回からは本シリーズの本題であり、SCMの有力候補でもある抵抗変化メモリ(ReRAM)の講演部分をご報告する。
CHEN氏はReRAMの講演パートでは始めに、代表的な国際学会におけるReRAMの発表件数の推移を示した。対象とした国際学会はIEDMとIMW、VLSIシンポジウムの3つである。発表内容は「デバイス/信頼性(Device/Reliability)」「モデリング/シミュレーション(Modeling/Simulation)」「セル選択素子(Selector)」の3種類に分けた。
発表件数をカウントしたのは、2004年から2015年までである。「デバイス/信頼性(Device/Reliability)」に関する発表が常に多い。2004年〜2009年の発表件数は1桁と少なく、ゆっくりと増えてきた。それが2010年以降は、発表件数が急激に増加した。2013年には31件に達している。「モデリング/シミュレーション(Modeling/Simulation)」の発表件数は常に少ないものの、2012年〜2013年をピークに2005年以降、件数が増えてきた。「セル選択素子(Selector)」に関する発表は2010年に登場し、その後に急速に増加した。
抵抗変化メモリ(ReRAM)の研究開発における特徴に、さまざまな元素(材料組成)が試されていることがある。それも抵抗変化層(高抵抗状態あるいは低抵抗状態を維持する層)だけでなく、電極層にもいろいろな材料組成が使われてきた。代表的な国際学会(IEDM/IMW/VLSIシンポジウム)で報告されたものだけでも、抵抗変化層に22種類、電極層に14種類の元素が採用されている。
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