京都大学はロームと共同で、新たな国際無線通信規格「Wi-SUN FAN(Field Area Network)」に対応した無線機の基礎開発に成功した。マルチホップ対応の無線通信技術を利用して、簡便にIoT(モノのインターネット)を実現することが可能となる。
京都大学情報学研究科の原田博司教授らの研究グループは2016年11月、ロームと共同で新たな国際無線通信規格「Wi-SUN FAN(Field Area Network)」に対応した無線機の基礎開発に成功したと発表した。マルチホップ対応の無線通信システムを利用して、簡便にIoT(モノのインターネット)を実現することが可能となる。
京都大学の原田研究室は、低消費電力でIoTシステムを実現できる無線通信方式を開発し、無線通信伝送部(物理層)の国際標準規格「IEEE802.15.4g」として標準化した。ロームは同規格に準拠した通信モジュールを開発してきた。また、京都大学とロームが中心となって、IEEE802.15.4gをベースとした無線通信規格の技術適合性・相互接続性認証を行う「Wi-SUNライアンス」を設けた。同技術の普及を推進するとともに、2016年5月にはWi-SUN FANの仕様書を発行した。
Wi-SUN FANは、IEEE802.15.4g規格の低消費電力無線伝送技術と、IPv6によるマルチホップ技術を利用した相互運用可能な無線通信技術である。都市部においても、1ホップ最大1kmのマルチホップ伝送を可能としているため、電気やガス/水道のメーターリング、環境や人の行動を管理/制御するスマートシティなどのIoT用途にも適しているという。
研究グループは今回、Wi-SUN FAN対応の無線機を開発するとともに、複数台の無線機を用いてマルチホップを利用したIP通信の基礎実験に成功した。試作した無線機は、IEEE802.15.4/4g/4e規格に対応した物理層やMAC層を備え、IETFが策定したアダプテーション層やネットワーク層、トランスポート層などの通信スタックを備えている。開発した無線機を用いると、1カ月に2000オペレーションで、最大10年間に渡ってセンサーの情報収集が可能だという。
共同研究では、京都大学の原田研究室がWi-SUN FAN仕様に基づいた無線機の基本設計を行った。ロームは同仕様に対応する通信モジュールの開発および無線伝送部の基礎ソフトウェアを開発した。日新システムズは基本設計に基づき同仕様に対応する通信ミドルウェアの開発を行った。
3者は今後、Wi-SUNライアンスが主催するWi-SUN FAN相互接続性使用検証イベントを始め、組込み総合技術展「Embedded Technology 2016」などにも参加していく。さらに、工場の制御機器や医療機器を接続するなど、新たな応用展開も進めていく考えだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.