東北大学大学院の成田史生准教授は2016年11月24日、強靭かつ軽量性を備えながら、発電性能が「世界最高レベル」とする自律発電型のスマート材料を開発したと発表した。
東北大学工学部材料科学総合学科の成田史生准教授は2016年11月24日、発電性能が「世界最高レベル」とする複合機能型新素材を開発したと発表した。
今回の成果は、磁歪(じわい)ファイバーを逆磁歪効果の機能を高めて機械構造物本体に埋め込む技術を確立したことによって、得られたものである。逆磁歪効果とは、磁歪合金に外力を加えると、原子の周りの電子軌道や電子自体の自転方向に影響し、結晶内部の磁気モーメント域が変化して、材料表面から漏れ磁束が発生する現象だ。応力センサーや環境型振動発電などに利用されているという。
埋め込んだ磁歪材料は、鉄基で原料が安く、加工性と強度に優れ、磁化・磁歪特性に優れたFe-Co(鉄−コバルト)合金である。Fe-Co合金は、2011年に東北大学客員教授で、弘前大学名誉教授の古屋泰文氏が発明したもので、東北特殊鋼が量産化している。
成田氏は、Fe-Co合金を直径0.2〜1mmの線材にして、磁束が繊維方向に浸透しやすい性質を引き出し、エポキシ系母材樹脂内部に埋め込むときの製造工程を改良。これにより、逆磁歪特性が極めて高い複合材料の作製を実現するとともに、樹脂の外側にコイルを配置することで、衝撃荷重で大きな電圧を発生させることに成功したとする。
従来材の鉄ガリウムと直径1mmのワイヤーで強化した複合材料で比較すると、単位体積当たりの出力電圧は約3倍を実現。成田氏は、「電力にすると約9倍になる可能性がある。直径1mmのワイヤーは、引張荷重を与えた状態で樹脂と混ぜて固めることができた。この場合、複合材料のワイヤーに引っ張り荷重が残るため、残った荷重が出力電圧を増大させたと考えられる。これも新規性の1つだ。現在挑戦中だが、直径0.2mmのファイバーで同様に成功できれば、従来材と比べ約10倍の出力電圧が期待できる」と語る。
また、今回の複合機能型新素材は、脆くて加工が難しい磁歪材料2種では不可能だった強靭さと軽量化を実現している。樹脂に埋め込む形のため、設計の自由度も高い。高感度センサーやIoTデバイスへの環境発電、蓄電機能への適用可能で、「日本発の“自律発電型”スマート材料の開発例として期待がかかる」(成田氏)とした。
なお、同研究の一部は、みやぎ産業振興機構における「新磁歪・電磁スマートデバイス開発研究会」の支援を受けて行われている。磁歪複合材料の開発には成田氏に加えて、担当学生である小林拓矢氏、帷子健一氏、武内洋樹氏、吉田湧氏が担当した。
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