メモリ分野に注力する中国。後編では、台頭しつつある中国のメモリチップメーカーの動きを探る。
IC Insightsでマーケットリサーチ担当バイスプレジデントを務めるBrian Matas氏は、台頭しつつある中国のメモリチップメーカーとして、以下を挙げている。
多くの中国企業の場合と同様に、これらのメーカーの計画は今のところ、単なる予定にすぎないようだ。
こうした中で、YRSTは注目に値するといえる。YRSTは、Tsinghua Unigroupがかつて、2件の米国企業の買収に失敗したことを受けて、設立するに至った会社である。
Tsinghua Unigroupは、まず2015年に、230億米ドルでのMicron Technology(以下、Micron)の買収に失敗している。その後、2016年初めに試みた、38億米ドルを投じてデータストレージグループWestern Digitalの筆頭株主になるという計画も、実現には至らなかった。
しかし、Tsinghua Unigroupは2016年7月26日、XMCの株式の過半数を取得し、XMCのための新しい持ち株会社として、YRSTを設立した。これにより中国は、メモリをめぐる野望を諦めていないと明示することになった。
XMCは、中国の武漢(Wuhan)に拠点を置き、かつてSMICの経営幹部を務めていたSimon Young氏が経営を担う。旧Spansion(現在はCypress Semiconductorと統合)向けに、NORフラッシュメモリを製造している。また、XMCは2015年初め、旧Spansionと共同で3D NANDフラッシュを開発した他、北京に拠点を置くGigaDeviceにもNOR型フラッシュメモリを提供しているという。
YRSTは、240億米ドルを投じて、300mm工場を3期に分けて建設する予定であると報じられている。既に第1期の工場建設が始まっていて、2019年の完成を予定している。
YRSTは、Spansionの技術を利用することにより、早ければ2017年末までには、32層の3D NAND型フラッシュメモリに向けたウエハーの生産能力を、月産30万枚に高められる見込みだとしている。
しかし、このYSRTに関しては、懐疑的な点がいくつかある。
EE Timesが取材を行ってきた日本の業界観測筋の多くは、XMCが実現したと主張する3D NANDフラッシュについて、懐疑的な見方をしているようだ。XMCがメモリ事業の実現を急いでいるというのは事実だが、実際にどのような方法で、いつごろをメドにNANDフラッシュの製造を実現できる見込みなのかが全く分からないからである。業界観測筋は、XMCが開発中であると主張する3D NAND技術のIP(Intellectual Property)について、疑問視しているようだ。
East-West CenterのシニアフェローであるDieter Ernst氏は、「旧Spansionの3D NANDフラッシュは、いまだに製造開始の見込みがないため、性能が低いのではないかとみられている」と述べる。
さらに同氏は、「XMCが32層の3D NANDフラッシュを市場に投入するころには、Samsung Electronicsなどの他のメーカー各社が100層以上を実現し、IntelとMicronが開発中の『3D XPoint』のような新しいメモリが登場しているだろう」と述べている。
Ernst氏は、「香港Sanford C. Bernsteinの研究者によると、中国では2013年に、半導体の輸入額が石油を上回ったという。XMCは、少なくとも1000億米ドルを投入するとみられている」と話した。
YRSTにとって、XMCの3D NANDフラッシュに依存することができない場合、他にどのような選択肢があるだろうか。
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