東京工科大学の研究グループは、好熱性糸状菌からグルコース脱水素酵素(GDH)を発見した。この酵素は耐熱性と長期安定性に優れており、高温地域で使用される血糖値センサーチップなどへの応用が期待される。
東京工科大学応用生物学部の横山憲二教授らの研究グループは2017年1月、好熱性糸状菌から、グルコース脱水素酵素(GDH)を発見したと発表した。この酵素は耐熱性と長期安定性に優れているため、高温地域で使用される血糖値センサーチップなどへの応用が期待されている。
糖尿病患者は、自己血糖値センサーなどを用いて血糖値の管理を行う。これらのセンサー素子にはこれまで、グルコースオキシダーゼやピロロキノリンキノン依存型GDHあるいはフラビンアデニンジヌクレオチド依存型GDH(FAD-GDH)などが一般的に用いられてきたという。ところが、これまでの酵素を活用する血糖値センサーは、高温環境での利用や常温での長期保存には適していなかった。
そこで研究グループは、従来と比べ耐熱性と長期安定性に優れたFAD-GDHを取得するために、好熱性糸状菌から同酵素の遺伝子のスクリーニングを行い、大腸菌と酵母を用いて作製することとした。
具体的に研究グループは、32株の好熱性糸状菌に対し、Aspergillus属FAD-GDH遺伝子に基づいて設計した縮重プライマーを用い、ゲノムDNAを鋳型とする縮重PCR(Polymerase Chain Reaction)を行った。そうしたところ、複数の株で、FAD-GDH遺伝子と高い相同性を有する遺伝子断片が増幅されていることを確認した。この遺伝子断片をプローブとしてFAD-GDH全領域を包括するゲノムDNAをクローニングで増やし、大腸菌と酵母を用いてこの遺伝子がコードするタンパク質を発現させた。
分泌シグナル配列を除去することで、可溶性画分から好熱性糸状菌Talaromyces emersonii、Thermoascus crustaceus由来タンパク質を精製することができた。精製したタンパク質の吸収スペクトルを測定/分析したところ、380nmと450nm付近の領域でそれぞれピークを観測することができた。これにより、グルコースを基質としFADを補因子とする酵素FAD-GDHであることが分かった。このFAD-GDHは、常温性Aspergillus oryzae FAD-GDHよりも高い熱安定性を示したという。
今回発見した酵素は、耐熱性に優れ長期保存が可能なことから、東南アジアやインド、アフリカなど高温地域において利用される血糖値センサーチップにも適用できるとみている。
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