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新型ドハティ増幅器、動作帯域は最大600MHz基地局装置の小型化を可能に

三菱電機は、1台で最大600MHzの動作帯域をカバーできる「超広帯域GaNドハティ増幅器」を開発した。次世代移動通信システム基地局の用途に向ける。

» 2017年01月16日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

周波数3.0〜3.6GHzで、最高のドレイン効率

 三菱電機は2017年1月、1台で最大600MHzの動作帯域をカバーできる「超広帯域GaN(窒化ガリウム)ドハティ増幅器」を開発したと発表した。次世代移動通信システム基地局の用途に向ける。

次世代移動通信システム基地局の増幅器部の回路構成イメージ。左が従来型ドハティ増幅器、右は新開発の超広帯域GaNドハティ増幅器を用いた例 (クリックで拡大) 出典:三菱電機

 新開発の超広帯域GaNドハティ増幅器は、従来型ドハティ増幅器に周波数補償回路を適用した回路構成である。従来型ドハティ増幅器は、「主」と「補助」の2つの増幅器で構成されている。この場合は、「伝送経路1」が持つ周波数依存性によって、中心周波数以外の周波数では効率よく動作させることが難しかったという。

 新型ドハティ増幅器は、補助増幅器の出力側に、周波数補償回路(伝送経路2)を新たに接続した。伝送経路2は、伝送経路1と逆の周波数依存性を持つ。これにより、伝送経路1の周波数依存性を打ち消し、中心周波数以外の周波数においても高い効率の動作を可能とした。この結果、動作帯域を従来に比べて3倍となる最大600MHzまで拡大できる。1台で複数の周波数をカバーすることが可能となり、基地局用装置の小型化を実現することができるという。

左は従来型ドハティ増幅器回路、右は開発した超広帯域GaNドハティ増幅器回路の概要 (クリックで拡大) 出典:三菱電機

 超広帯域GaNドハティ増幅器には、同社製GaN HEMT(高電子移動度トランジスター)「MGFS39G38L2」を採用している。ピーク対平均電力比(PAPR)7.5dB、20MHz LTE変調信号を用いて、超広帯域GaNドハティ増幅器を評価したところ、周波数3.0〜3.6GHz(動作帯域600MHz)において、45.9%以上のドレイン効率を達成した。「この性能は世界最高」と同社は主張する。また、デジタル歪み補償技術を用いることで、隣接チャネル漏洩電力比(ACLR)は−50dBcを達成した。

 今回の開発成果は、米国・フェニックスで2017年1月15〜18日に開催される国際会議「PAWR 2017」で発表する。

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