電子輸送層に用いる物質としては、アモルファス亜鉛シリケート(a-ZSO)を新たに開発した。電子移動度が最大1cm2/(V秒)で、n型有機半導体に比べて3桁以上も大きく、陰極となるIOT膜やアルミニウムとは電気的な障壁が存在しない「オーミック接触」となる。しかも仕事関数は3.5eVで、既存の酸化物半導体に比べても極めて小さい。
研究グループは、新たに開発したa-C12A7電子化物を電子注入層に、a-ZSOを電子輸送層にそれぞれ用いて、逆構造の有機ELデバイスを作製した。そうしたところ、一般的に用いられているLiFとAlを用いた順構造のデバイスに比べて、優れた特性を示すことが分かった。しかも、ZSOは移動度が大きく透明であることから、膜厚を現行の10倍にしてもEL特性にはほとんど影響しないことが分かった。膜厚を十分に確保することで、ピンホールによる陰極と発光層の短絡を防止することもできるという。
研究グループは、今回開発した技術が有機ELのみならず、照明や太陽電池などのデバイスにも応用できるとみている。
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