半導体単層CNT、塗布型で最高級の移動度を達成:塗布技術で製造コストを安価に
東レは、塗布型半導体単層カーボンナノチューブ(CNT)で世界最高レベルの移動度を達成した。一般的なアモルファスシリコンに比べて約80倍も高い移動度となる。
東レは2017年2月、塗布型半導体単層カーボンナノチューブ(CNT)で世界最高レベルの移動度を達成したと発表した。移動度は従来の塗布型半導体に比べて2倍、アモルファスシリコンに比べると約80倍を実現した。
東レはこれまで、CNTへのダメージを抑えて、より純度の高い半導体型CNTを取り出す手法として、半導体ポリマーを単層CNTの表面に形成する技術を開発してきた。そして今回、半導体純度の高い単層CNTにより強く相互作用する新しい半導体ポリマーを見出した。これを用いることで、より小さいエネルギーで単層CNTを均一に分散できることを確認した。
開発した技術を用いて、薄膜トランジスタ(TFT)素子を作製したところ、その移動度は81cm2/Vsとなった。この数値は、ディスプレイなどで一般的に用いられているアモルファスシリコンTFTに比べて約80倍という高い移動度となる。
今回開発した技術は、高い基本性能を実現するとともに、これまでに比べ製造コストを低減できる可能性を示した。半導体素子の製造プロセスとして、フィルムなどの汎用素材を用い、その上にウェットコーティングする塗布技術を用いることが可能となるからだ。
同社は今後、部品コストを抑えたRFICタグやバイオセンサーといった用途向けに、実用化研究を進めていく。なお、この研究成果は、「nano tech 2017」(2017年2月15〜17日、東京ビッグサイト)で詳細に発表する予定となっている。
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