富士通セミコンダクターは2016年8月、Nantero(ナンテロ)とともに、カーボンナノチューブ(CNT)応用型不揮発メモリ「NRAM」の商品化に向けた開発を実施すると発表した。
富士通セミコンダクターと三重富士通セミコンダクターは2016年8月31日、Nantero(ナンテロ)が持つカーボンナノチューブ(CNT)応用型不揮発メモリ「NRAM」のライセンスを受けて、NRAM関連製品の商品化に向け3社で共同開発することで合意したと発表した。富士通セミコンは2018年末までにNRAMを混載したカスタムLSIを商品化するという。
Nanteroは、米国マサチューセッツ州に本社を置く2001年設立の企業。CNTを応用した不揮発メモリであるNRAMに特化したビジネスを展開する。Nanteroによると、NRAMは「DRAMと同様の速度およびDRAMをしのぐ密度、フラッシュの不揮発性を持ち、スタンバイモード時の電力消費は実質ゼロ。1ビットの書き込みに要するエネルギーはフラッシュの160分の1」とする。また、既存のCMOSプロセス対応の半導体製造ラインで製造でき、特殊なツールや製造プロセスを必要としないという。2015年時点で、4Mビットのメモリチップで高い歩留まりを実現し、サンプル出荷を開始し、7つあるCMOS製造工場でNRAMの製造装置の設置も完了したとしている*)。
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富士通セミコンと三重富士通セミコン、Nanteroの3社は、これまで数年間NRAM技術の評価を進めてきた経緯があり、今回の合意に基づき、本格的な共同開発を行う。共同開発では、組み込み型フラッシュメモリに比べ数千倍の書き換え耐性、書き換えスピードの実現と、将来的には不揮発性メモリによるDRAMの置き換えを目指す方針。その上で、2018年末までに富士通セミコンがNRAM混載カスタムLSIを商品化し、その後、単体NRAM製品の商品化を計画する。富士通セミコンの子会社で半導体受託製造企業(ファウンドリー)である三重富士通セミコンは、NRAMベースの技術を自社顧客向けに提供していく予定だ。
FRAM(強誘電体メモリ)を手掛ける富士通セミコンでは「豊富なFRAMの設計・量産化の経験とスキルが、NRAMの開発・量産化に生かされる。Nanteroが提供するテクノロジーと当社の設計・量産化技術の融合は、長年当社が顧客から求められている不揮発性メモリに対する低消費電力性、高速書き込み性、高書き換え耐性、大容量化の要求を満足させるだろう」とリリースでコメントしている。
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