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1/100秒単位でシミュレーションした「飛び込み」は、想像を絶する苦痛と絶望に満ちていた世界を「数字」で回してみよう(39) 人身事故(11)(1/7 ページ)

今回は「飛び込みを1/100秒単位でシミュレーションすること」に挑みます。私が目指すところはただ1つ。このシミュレーションによって「飛び込みによる、想像を絶する苦痛」を浮き彫りにすることで、たった1人だけでも、飛び込みを思いとどまってほしい――。本当にこれだけなのです。

» 2017年02月10日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]
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「世界を『数字』で回してみよう」現在のテーマは「人身事故」。日常的に電車を使っている人なら、1度は怒りを覚えたことがある……というのが本当のところではないでしょうか。今回のシリーズでは、このテーマに思い切って踏み込み、「人身事故」を冷静に分析します。⇒連載バックナンバーはこちらから


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 こちらのメールアドレス(one-under@kobore.net)に『アンケートに応じます』とだけ書いたメールを送付していただくだけで結構です(お名前、自己紹介などは必要ありません)。ぜひ、よろしくお願い致します。

 なお、アンケートにご協力いただいた方には、江端の脱稿直後の(過激なフレーズが残ったまま?の)生原稿を送付させていただくという特典(?)がついております。


締切直前の週末、江端家に漂う黒いオーラ

 私がご依頼いただいているコラムの原稿締切は、月曜日が多いです。

 これは、私が「週末ライター」であることと関係があるのですが、当然、その月曜日の直前の週末の私の精神状態は ―― 私には自覚がないのですが ―― 家族が言うには「すさまじい」ものなのだそうです。

 もちろん、私は、自宅で暴れて、家族に暴力を振るう などという、低能なゲス人間ではありません。『できるだけラクに人生送りたい』と人生ナメてるダメな奴でもありませんし、(自宅のローンはあるけど)借金はないし、働きもせず酒ばかり飲んで『俺がダメなのは世間のせいだ』と文句を言う輩(やから) ―― でもありません。

画像はイメージです

 家族が言うには、私の「オーラ」が問題なのだそうです。

 特に、私の執筆が佳境に入ってくる状態 ―― いわゆる『神が降りている』状態(「英語の文書作成は“コピペ”で構わない」) ―― においては、私の部屋のドア周辺はもちろん、階下のリビングにまで、「黒いオーラ」が漂ってくるのだそうです。

 そして、家の中全体が、息苦しい緊張感に包まれる ―― らしいのです。

 嫁さんからは、『なんとか、あの黒いオーラを出さずに執筆してもらえないものか』と相談されているのですが、こればかりは、私もどうしたら良いのか、分かりません。


 もちろん、私は、家族の言う「黒いオーラ」とは、一種のメタ表現であると思っています。

 多分、執筆佳境中の私の挙動は、

  • 100m先も遠くを見るような目線でPCのディスプレイを眺め、
  • 外界の音に反応できなきなくなるほどのインナーワールドに入り込み、
  • 3時間以上も同じ態勢(1cmも動いていないように見える)で執筆を続ける、

などの状態に陥っているのは確かなようですので、そこから「黒いオーラ」というメタファーが誕生した、とも考えられます。

 ただ、それでも1つ、疑問が残ります。

 そもそも締切直前の週末は、私は自室でカンヅメ状態になっていますので、家族と顔を合わせる機会も時間も少ないのです。つまり、私の家族は、私の執筆しているところを視認できないはずなのです。

 それなのに、なぜ私の家族は、私の「黒いオーラ」の発生を検知できるのか?

 これは大きな疑問であり、興味深いテーマでもあります。

 それはさておき。

 今回、私はこのコラムで、コンピュータを使ったシミュレーションを予定していませんでした。先月から、再三検討を続けてきたのですが『難しいし、時間がない』と判断していたからです。

画像はイメージです

 ところが、執筆を本格的に開始した、土曜日の午後2時ごろのこと。

 突然、天啓を受けたかのように、目の前に、飛び込み自殺の現場が、コマ送りのごとくスローモーションで見え始めたのです。さらに、私の視点は、電車の底に潜り込み、人体が轢断され、肉片が飛び散る様子が、すさまじいまでのリアルさを持って見えてきました。

 その瞬間、私の頭の中では、この問題をモデル化する方法と、設計すべきオブジェクト(列車、車輪、人体)とそのメソッド(運動方程式)が、瞬時に展開されたのです。

 そして、エディタを開いてコーディングに着手しました。完了まで30分。デバッグ回数(たったの)2回。シミュレーションの計算結果は1時間30分後には全て出そろいました。

 こうして、私の「飛び込み自殺」のシミュレーションプログラム(「飛び込み自殺遺体散乱検証シミュレーター」)は、あっという間に作成され、その目的を完遂してしまったのです。


 私は、現時点において、信じる神を持たない人間ではありますが(私は、神社にも寺社にも教会(モスクを含む)にも行く)、今回ばかりは、何か特別な力のようなものを感じずにはいられませんでした。

このシミュレーション結果を世に広く知らしめよ

―― と、誰かに言われているような気がするのです。

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