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» 2017年02月10日 11時30分 公開

1/100秒単位でシミュレーションした「飛び込み」は、想像を絶する苦痛と絶望に満ちていた世界を「数字」で回してみよう(39) 人身事故(11)(5/7 ページ)

[江端智一,EE Times Japan]

電車が停止するまでの10秒間で、何が起こるのか

 次のグラフで、江バ電が停止するまでの10秒間に何が行われているのかを、シミュレーション結果に基づいて、具体的に説明します。

 上図の左図は、先ほどの4秒までの様子を、江バ電が停止する10秒後まで表示したものです。轢断されたあなたの体は、最大28.5mまでレールの外と中で散乱していることが分かります。

 上図の右図は、レールの中に残ったあなたの体(または、その一部)が、電車の底の凶器たちによって、突き飛ばされて(加速させられて)は、枕木と砂利で衣服と皮膚を剥されながら減速させられ、再び突き飛ばされて……というのを繰り返している様子を示しています。

 このシミュレーションの結果では、停止する10秒の間に8回も轢断され、8回も突き飛ばされている様子が明らかです。

 では、実際に、あなたの体はどんな風に線路上に散乱しているのでしょうか。1つの具体例を示します。

 赤色が轢断されて分離されたあなたの体の一部です。黒色はこれから轢断されるあなたの体の一部を示しています。

 この“28.5mにわたる惨状”は、私が写真や各種の証言から推定したものですので、それほど大きくは外していないと思います。

 上記の図中の(A)〜(D)は、前述の(A)足首轢断、(B)脛(スネ)轢断、(C)両腿(モモ)轢断、(D)胴体轢断に対応させて記載していますが、この通りの散乱になるとは限りません。実際にどのような散乱状況になるかは、あなたが実際に電車に飛び込んでみるまでは分からないのです。

 しかし、この図で、私が描きたかったことは、もし、この28.5mのプロセスで、あなたの頭部/首/胴体が直接轢断されることがなければ、自分のカラダのパーツを眺めながら絶望的な苦痛の中で死んでいくことになるかもしれないという、残酷な事実です。

 上記の図では、最後の8回目の轢断で、胴体を切断されていますので、2分程度で死に至れるとは思いますが、2分間は生きている(しかも意識がある可能性すらある)ことに留意してください。

 運悪く大腿部の轢断にとどまれば、(まず命は助かりませんが、それでも)20分間は生きています。その時、もし、あなたの眼球や耳鼻および脳が機能していれば、あなたは、自分自身が切り刻まれる音を聞き、バラバラの自分自身の体を目撃し、その肉体の血の匂いを嗅ぐことになります。

 そして、考え得る最悪のケースは、あなたが外部の声に反応できない状態でありながら、あなたに意識のある状態の時です。

 このような場合、あなたは、轢断されたあなたの手や足と一緒にこんな風に詰め込まれ、あなたは、生きながらにして、この袋の中で、たった1人で死んでいくことになるのです*)

*)前回のコラムでご紹介した、江端家次女が、『仮に将来自殺をすることがあったとしても、飛び込み自殺だけは絶対にしない』と宣言するに至った理由が、この「袋」です。

 しかし、その後、シバタさまより、死亡確認の方法については、厳密なルールと手続が適用されていて、「万に一つも、生きながらにして袋に詰められるような事態は発生しない」というご指摘と、その具体的な運用形態について指導いただきましたので、上記の江端の「『袋』仮説」は取り下げます(こちらのシバタレポートNo.4をご参照ください)。

 私が調べた限りにおいて、鉄道への飛び込み自殺のパターンは、おおむね以下の3つになるようです。

 はっきり言って、全くなっていない。上記の#1〜#3は、私の検討から明らかなように、むしろ苦痛を ―― 人道的に人間に与えることが許される限度を超えた苦痛を ―― 自ら選択しているようにしか見えないのです。

 繰り返しますが、飛び込み自殺の本質は、人体の轢断であり、その期待される効果は短時間の出血多量による死です。しかし、飛び込み自殺の轢断は、それが実施されるまで、どのような態様になるのか予測不能であり、そして、私が検討した範囲内において、多くの場合、「無痛・即死」は困難なのです。

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