東京大学らの研究グループは、二硫化タングステンナノチューブがトランジスタに動作し、超伝導特性が発現することを発見した。
東京大学らの研究グループは2017年2月、二硫化タングステン(WS2)ナノチューブがトランジスタに動作し、超伝導特性が発現することを発見したと発表した。
今回の研究は、東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター・物理工学専攻の岩佐義宏教授(理化学研究所創発物性科学研究センター創発デバイス研究チームのチームリーダー兼任)、同研究科附属量子相エレクトロニクス研究センターの井手上敏也助教、同研究科物理工学専攻の秦峰大学院生らの研究グループ、Holon Institute of Technology(イスラエル)のA.Zak上級講師、Weizmann Institute of Science(イスラエル)のR.Tenne教授、理化学研究所物質評価支援ユニットの橋爪大輔ユニットリーダーらの研究グループが共同で行った。
今回の研究に用いたWS2ナノチューブは、グラフェンに次ぐ原子層物質として注目されているという。金属と絶縁体の中間の電気伝導性を示す半導体で、固体ゲート絶縁体材料を用いて電気伝導性の制御や力学特性の研究が行われてきた。しかし、超伝導を含む電気伝導性の大幅な制御に関する研究成果の報告はこれまでにないという。
研究グループは今回、直径が約100nmの多層WS2ナノチューブを基板上に分散させ、単一ナノチューブのデバイスを作製した。ゲート絶縁体材料は従来の固体材料ではなく、電解質(KClO4)を用いて電気伝導性の制御を行った。この電解質に電圧を印加すると、電解質中のイオンが物質表面や原子層物質の層間に集積して、物質中に電荷が蓄積されキャリア数の制御が可能となった。
この結果、半導体であるWS2ナノチューブに電子が蓄積され、金属的電気伝導特性を示した。そして、電子が多量に蓄積された領域では、5.8K(−267.4℃)以下で電気抵抗がゼロとなる超伝導特性が発現することを確認した。「単一ナノチューブにおいて超伝導特性を観測したのは初めて」と研究グループは主張する。
今回の研究では、電気抵抗がチューブ軸と磁場の角度に大きく依存する異方的な振る舞いを示すことが分かった。また、磁場がチューブ軸に平行な場合に、電気抵抗は円筒を貫く磁場の影響を受けることや、磁場と電流が平行か反平行かによって、電流電圧特性が異なる振る舞いを示すことなどが明らかとなった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.