技術商社であるAvnetとArrow Electronicsが、IoT(モノのインターネット)関連の事業拡大に向け、それぞれ積極的に取り組んでいる。
年間売上高が262億米ドルのAvnetは、設立から間もないメーカーやIoTハードウェアを手掛ける新興企業をターゲットにしている。一方、年間売上高が228億米ドルのArrow Electronics(以下、Arrow)は、既存の企業で新たにIoT関連のビジネスを始めようとしているメーカーをターゲットとしている。AvnetとArrowはいずれも、新たなスキルやパートナーシップが求められる、新しい顧客層へ門戸を開こうとしている。
現時点では、AvnetとArrowは、新しい顧客やパートナーについてほんの一握りしか明らかにしていない。
AvnetでChief Transformation Officerを務めるPete Bartolotta氏は、「Avnetはこれまで、どちらかといえば受け身の体勢だった。今後は、サプライチェーンへの関与をさらに深め、コンセプトを練る段階から顧客をサポートしていきたい。顧客が、より簡単にモノづくりに取り組めるようにしていくことが、当社の目標だ」と述べている。
この目標の達成に向けて、Avnetは2016年10月、英国のディストリビューターであるPremier Farnellと、そのオンラインコミュニティーである「Element14」を買収した。さらに、同年11月には、インターネットに接続するハードウェアの設計やプログラミングを学ぶ、世界中のユーザーをサポートするオンラインコミュニティーを運営する米Hackster.ioを買収すると発表した。これにより、同社が抱えるオンラインコミュニティーのユーザー数は60万人に達したという。
2016年9月には、構想から製造まであらゆる設計活動に携わるパートナーを対象にしたフォーラムとして、自社運営のWebサイト「MakerSource.io」を立ち上げた。対象となるパートナーには、潜在的な投資家の他、弁理士なども含まれている。
Bartolotta氏は「Premier Farnellが2〜3個、数十個という小規模の単位で販売する一方、Avnetは何万個、何十万個の単位で扱う。当社は現在、Premier Farnellが何を販売しているかについて分析を進めている。顧客の注文パターンが分かれば、ユーザーが、単なる趣味からもう1歩進んだモノづくりへと移行していることが見えてくるだろう」と述べた。
Avnetは1年以上前、新たに買収した企業と社内の関連サービス部門の両方を統合し、IoTグループをAvnetの傘下に設立した。Avnetに16年間勤務したベテランで、IoT部門の最初のバイスプレジデントを務めたEric Williams氏が退職したため、数週間以内に同氏の後任となる人材を雇用する予定だという。
Bartolotta氏は「私の目標は、当社が全体的な再構築を進めているIoTの取り組みに対して、さらに多くのリソースを投じることである」と述べる。そのための施策には、クラウドサービスプロバイダーやクラウドソーシングサイトとの協業のほか、大学での設計コンテストの後援などが含まれるという。
一方のArrowも、さまざまな分野の企業とともにIoT関連の取り組みを進めている。例えば、ある鉄鋼メーカーが、工場内の設備をモニタリングするためのIoTシステムを導入する際に手助けをしている。資産管理企業である米Electronica Deltaとともに、空港にセンサーネットワークを敷設するプロジェクトにも関わった。さらに、体内に取り込めるセンサーを使って乳牛の健康状態をモニタリングするシステムを開発した酪農業者とも、パートナーシップを結んでいる。このシステムは、Bella Agというスタートアップの製品としてスピンアウトされた。
ArrowでIoTセールス部門のグローバルバイスプレジデントを務めるAiden Mitchell氏は、「パートナーシップを組めない企業など、もはやないに等しい。彼らは、自分たちが使うIoT機器に信頼性があり、何年も使える限り、そのハードウェアにどんな部品が搭載されているかなど、まったく気に掛けない」と述べている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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