2012年ごろから、主に高性能コンピューティング(HPC)分野では「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)」の製品化が進んだ。その最大の特長であるシリコンインターポーザは優れた技術なのだが、コストが高いのが難点だった。そのため、CoWosの低コスト版ともいえる2.nD(2.n次元)のパッケージング技術の提案が相次いだ。
2016年12月に開催された国際学会IEDMのショートコース講演(技術解説講演)から、「システム集積化に向けた最先端パッケージング技術(Advanced Packaging Technologies for System Integration)」と題する講演の概要をシリーズでご紹介している。講演者はシリコンファウンドリー最大手のTSMCでシニアディレクターを務めるDouglas Yu氏である。なお講演内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、Yu氏の講演内容を筆者が適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
前回は、TSMCが開発してきた2種類の2.5D(2.5次元)パッケージング技術、「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)」技術と「InFO(Integrated Fan-Out wafer level packaging)」技術を簡単に紹介した。
Yu氏の講演は、前回までが序論に相当する。今回からは本論に入る。本論の前半は高性能コンピューティング(HPC)向けパッケージング技術、本論の後半はモバイル向けパッケージング技術である。
ここからは、高性能コンピューティング(HPC)向けパッケージング技術の解説をご紹介する。2.5D(2.5次元)あるいは2.nD(2.n次元)などと呼ばれる新世代のパッケージング技術は、TSMCが開発した「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)」から始まったといえる。CoWoS技術は主に高性能コンピューティング(HPC)分野で2012年ころから製品化されてきた。
前回で述べたように、CoWoS技術の最大の特徴は、「シリコンインターポーザ(Silicon Interposer)」と呼ぶ中間的な基板の導入にある。シリコンインターポーザは優れたソリューションなのだが、大面積のシリコンダイを使うことによる製造コストの上昇は、歓迎された訳ではない。
このため、CoWoS技術の登場以降はその低コスト版と呼べる、2.nD(2.n次元)のパッケージング技術を他社が相次いで提案していった。その主眼は、シリコンインターポーザの導入によるコストの上昇を抑えながらも、高密度な配線によって複数のシリコンダイを密接に並べることにある。
低コスト版2.nD(2.n次元)パッケージング技術の流れを大まかに述べると、インターポーザとなるシリコンの面積を小さくしたり、インターポーザの材料をシリコンではなく樹脂に換えたりする試みがまず、現れた。さらには、インターポーザそのものを省く試みがいくつか、提案されていった。
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