三菱電機は、ノキア・ベル研究所やカリフォルニア大学サンディエゴ校と共同で、次世代移動通信基地局向け「GaN電源制御増幅器」を開発した。このデバイスを電源制御回路に用いることで、変調信号速度80MHzの高速動作が可能となる。
三菱電機は2017年5月、ノキア・ベル研究所、カリフォルニア大学サンディエゴ校と共同で、次世代移動通信基地局向け「GaN電源制御増幅器」を開発したと発表した。このデバイスを電源制御回路に用いることで、変調信号速度80MHzの高速動作を実現する。これは第3世代で用いられる変調信号に比べて4倍となる
次世代の移動通信システムでは、膨大なデータ通信量を高速に処理するため、変調信号の高速化や多素子アンテナの採用などによって通信回線の増強を進めている。ところが、移動体通信端末の電源制御回路に用いられている一般的なシリコンデバイスだと、高速動作と高電圧動作を両立することができず、次世代移動通信基地局の装置にそのまま用いることは難しかった。
今回は、三菱電機が開発したGaN電源制御増幅器を、基地局装置の電源制御回路に採用した。これによって対応可能な変調信号を80MHzまで高速化することができるという。また、ノキア・ベル研究所が開発したリアルタイムひずみ補償回路を搭載した。これによって、変調信号速度が80MHz時でも、隣接チャネル漏えい電力(ACLR:Adjacent Channel Leakage Ratio)−45dBcを達成した。GaN電源制御増幅器のキャリア周波数は0.9〜2.15GHz、出力電力は30〜30.7dBmである。
基地局の電力消費を低減する工夫も行った。一般的な増幅器は、トランジスタの印加電圧を固定して動作させる。この場合、増幅器の飽和出力電力領域では高い効率で動作するものの、出力電力が低い領域だと効率が低下する。このため、ピーク対平均電力比(PARP:Peak to Average Power Ratio)の高い信号を増幅する場合には、平均効率が低下するという課題があった。
開発した回路では、変調信号の時間変化に応じて、トランジスタの印加電圧を制御する。これにより低出力電力領域での効率を改善することができ、増幅器の電力効率を最大41.6%まで高めた。これは次世代の移動通信基地局向け電源制御増幅器としては、世界でもトップクラスの数値だという。
三菱電機は今回の成果をベースに、2017年度以降にも効率をさらに高めた増幅器を開発し、出力電圧や周波数が異なる次世代移動体通信システム向け増幅器として製品展開する予定である。
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