再編が進み大きく業界地図が塗り変わりつつある半導体業界。半導体を取り扱う半導体商社の経営環境も激変期にある。そこで、EE Times Japanでは各半導体商社の社長にインタビューし、今後の成長や戦略を聞く企画を進めている。今回は、2017年に創業70周年を迎えた菱電商事に聞いた。
2016年になっても収まらなかった、半導体業界に吹き荒れるM&Aの嵐。ソフトバンクによるARM買収を始め、Analog DevicesによるLinear Technology買収、QualcommによるNXP Semiconductorsの買収など、業界を揺るがす話題が相次いだ。
この業界再編は、半導体商社にとっても変革期を迎えたことを意味するだろう。EE Times Japanは「業界再編の波に、半導体商社はどう立ち向かうのか」と題して、各社トップへのインタビューを進めている。今回は、菱電商事社長の正垣信雄氏に聞いた。
EE Times Japan(以下、EETJ) あらためて菱電商事について教えてください。
正垣信雄氏 当社は1947年に設立した企業で、2017年に創業70周年を迎えた。100年続く企業を目指しており、これまではおよそ25年ごとに事業の構成が分かれている。もともとは三菱電機の家電製品の販売から始まり、最初の25年間の中心を占めていた。
次の25年は、今の中心事業の原形が立ち上がった。FAと空調冷熱、ビル・情報通信、半導体デバイス事業である。特に半導体デバイス事業は急速に成長し、現在は売り上げ全体の6割以上を占めている。1997年からの第3クオーターは、バブルの崩壊やリーマンショックなど激動の20年だった。当社の業績も、これらの社会情勢に大きく左右された。
このような社会情勢の影響もあり、次のエンジンがなければ100年続かないという思いから、2013年にシステム・ソリューション事業部を開始した。これが少しずつ実を結んでおり、2016年4月には一部を「ヘルスケア事業部」として独立させている。
EETJ もともとは家電製品の販売だったのですね。
正垣氏 25年ごとに事業の構造が変化したことで、FAや空調冷熱、半導体デバイスなど基幹事業が幅広くあることが当社の強みだ。複数の分野を横断するソリューション事業を行う上でも、幅広い事業を展開していることは強みといえるだろう。
また半導体デバイスは1つの顧客に大規模な量が出るため、横の産業への広がりではなく、顧客と向き合うことに特化していた。それも非常に重要だが、これからは産業を横断したソリューション提案に注力して、次の事業の大きな柱を育てていきたい。
EETJ 2018年までの中期経営計画では、利益を重視しているように見えます。半導体デバイスは利益が出にくい印象がありますが、どのように考えていますか。
正垣氏 先ほども述べたように、半導体デバイス事業の重要性は薄れない。納入している顧客は車載やティア1など会社規模が非常に大きく、そことの付き合いは重要だ。仕入れ先である半導体メーカーとの付き合いも含めて、縮小していくことはない。おっしゃる通り、利益はなかなか出にくい事業のため、FAE(Field Application Engineer)の数を増やして付加価値をつけるなどして、売り上げを拡大させていきたい。
ラインカードも増やしていく方針である。もともと三菱電機の半導体を扱っていたため、現在はルネサス エレクトロニクスの比重が高い。三菱電機に関してはパワー半導体や液晶関係を今も取り扱っており、今後も注力していくのは変わらない。新しいメーカーとの取引は直近で何かあるかといったらないが、拒否するつもりは全くない。
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