ソニーは2017年6月5日、10μm角画素の裏面照射型Time of Flight(ToF)方式距離画像センサーを開発したと発表した。
ソニーは2017年6月5日、10μm角画素の裏面照射型Time of Flight(ToF)方式距離画像センサーを開発したと発表した。ソニーは裏面照射型ToF方式距離画像センサーとして10μm角サイズの画素は「業界最小」としている。
開発した裏面照射型ToF方式距離画像センサーは、ソニーが2015年に買収したSoftkinetic Systems(ソフトキネティックシステムズ)のToF方式距離画像センサー技術と、ソニーのCMOS裏面照射型CMOSイメージセンサー技術を組み合わせて実現したという。
ToF方式とは、光源から発した光が対象物で反射してセンサーに届くまでの光の飛行時間(時間差)を検出し、対象物までの距離を測定する技術方式。ToF方式を採用したイメージセンサーは、画素ごとに距離情報を検出し、高精度な距離画像を取得できることになる。なお、測距精度を高めるには、反射光を効率よく捉えるとともに、より高速に距離測定の処理を行う必要があるとされる。また、反射光の集光、利用効率を向上させ、光源の出力を抑え、センサーとしての消費電力低減に向けた開発も進められている。
Softkineticはこれまで、独自の画素技術「CAPD(Current Assisted Photonic Demodulator)」を用いたToF方式距離画像センサーを展開。CAPDは、光源の飛行時間を利用した位相の異なる信号の読み出しを複数回行い、その信号の比率を出力することで、距離に換算する技術。こうした手法で距離を割り出す場合、一般的に距離画像のSN(信号対ノイズ)比を上げるために反射光信号の利用効率の向上に加え、画素内に複数の読み出し回路を配置し、反射光の遅延が正しく計算できるように複数の位相の信号を正確に読み出差なければならない。加えて、測距精度向上のために、より高速な周波数で駆動することが必要になる。
そこでCAPDは、電位勾配(電子転送のための斜面)を動的に作り、画素内ドリフト電流で高速転送を行う画素構造を採用。受光部で反射光から変換された電子を、2つの読み出し部の間で効率よく高速に転送し、より正確な位相差信号取得を可能にしている。
今回、このCAPDに、配線が受光部の下に配置されるという裏面照射型構造を適用し、画素の有効開口率(チップに対する受光部の割合)を向上させた。その結果、表面照射型の15μm角画素と同等の集光効率を、裏面照射型の10μm角画素で実現し、距離画像センサーの小型化を図りながら、より高精度な測距性能を可能にした。同時に、「高い集光効率により、光源の出力を抑えることができ、距離画像センサーモジュールの低消費電力化と小型化に貢献する」(ソニー)とする。
さらに、裏面照射型導入に合わせて画素構造と画素内配線をToF方式に合わせて最適化することで、測距に必要な位相差の検出をより高速化することにも成功。反射光の利用効率を維持したまま駆動周波数を表面照射型の従来センサーと比べ2倍になる100MHzに高めた。これにより、同一の距離であれば従来よりも測距精度が向上するため、高品位な距離画像が得られる他、従来と同一精度であれば1.5倍の距離まで距離画像を得られるようになった。
ソニーでは今後、開発したセンサーを「DepthSense」商品群として、ジェスチャー認識や物体認識、障害物検知などの応用用途に展開していく方針。
なお、本開発成果は、2017年6月5日から開催されている「VLSI Symposia on VLSI Technology and Circuits(VLSIシンポジウム)」で発表された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.