Grindstaff氏は、同日の午前中にプレスカンファレンスと基調講演を行い、統合に関して説得力のある見解を示した。同氏は、「当社の顧客は幅広い業界のシステムベンダーが大部分を占めるが、近年、製品に組み込むチップを自社設計するベンダーが増えている。こうした状況に対応するには、統合が必要だった」と述べた。
基調講演で、同氏は満席の会場に向けて、「IoT(モノのインターネット)で、インターネットに接続されるモノの数に関してはさまざまな予測があるが、現在も数多くのデバイスが接続されていて、その数はさらに増え続けていくという点に関しては意見が一致している。Siemensは統合によって、MentorがIC分野で確立した設計技術を獲得し、同技術をシステムレベルで展開するチャンスも得た」と述べた。
さらに、同氏は「当社の顧客の多くが関わっている分野における変化のスピードに対応できるようにしなくてはいけない。そのことも、Mentorを買収する原動力となった」と続けた。
Grindstaff氏の説明を踏まえると、Siemensは、「チップの設計」という分野に少しずつ近づいていくのではなく、その分野における豊富な知識と実績を持つ企業を買収することで、一気にそこに到達することを狙ったのだろう。
Siemensは、2017年3月に買収を完了し、IC設計の“資産”を手に入れた。一方でMentorは、これまで入り込めなかった市場に自社の製品を売り込むリソースを得た。Rhines氏によれば、Mentorの売上高の35〜40%は、プリント基板の設計から流量シミュレーション、熱伝導シミュレーションに至るまで、幅広くMentorのツールを利用するシステム企業から得ているという。
Rhines氏は「システム分野では、当社は既に約1500社の顧客を有している。潜在顧客の数はおそらく1万社に及ぶだろう。そのような潜在顧客に積極的にアプローチし、当社の製品を使ってもらいたい」と述べた。
さらにRhines氏は、Siemensの豊富なリソースと、長期的な成功に対する貪欲さによって、Mentorは研究開発(R&D)の重きが高いEDAビジネスにおいて、競合先に渡り合うことができるようになったと述べた。
EDA分野では、売り上げ高の30%超を研究開発に投じる企業も多い。その点では、近年のMentorは、CadenceやSynopsysに後れを取ってきた。Rhines氏が付け加えたところによると、Siemensは、Mentorがけん引する領域に対して、積極的に投資する意思を示しているという。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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