AppleからGPUコアの技術利用停止の通達を受けたImagination Technologiesが、全社売却を決定した。Appleの通達を受けたとImaginationが発表してから、わずか2カ月後のことだ。
Appleという上位顧客を失うことになった英Imagination Technologies(以下、Imagination)は2017年6月22日(現地時間)、取締役会が全社売却を決定したと発表した。入札候補者との予備的な話し合いも、既に進めているという。
Imaginationが、「Appleから、今後15カ月〜2年以内に、GPUコアの利用を停止するとの通達を受けた」と発表したのは、2017年4月のことである(関連記事:AppleがImaginationのGPU使用を停止、2年以内に)。その後、Imaginationは同年5月に、Appleとの裁判外紛争解決手続を開始している。
Appleは、ImaginationのGPUコアの利用を停止し、代わりに自社開発のGPUコアを使うとされている。これに対して、Imaginationは「Appleが、Imaginationの特許を使用することなく、GPUコアを開発できるとは思えない」という見解を示した。業界アナリストの中には、「Imaginationは最終的に、Appleを提訴する方向に動くかもしれない」とみる者もいる。ただし、EE Timesが関係筋から得た情報によれば、現時点ではImagination側に訴訟の動きはないようだ。
EE Timesが取材した複数のアナリストによれば、Appleから技術利用停止の通達を受けたにもかかわらず、Imaginationの買収に興味を持つ企業は数多く存在するという。
Tirias Researchで主席アナリストを務めるJim McGregor氏は、Imaginationの売却に関するうわさは、ここ1年ほど常にあったという。ただしこれまでは、具体的な交渉を持ちかける企業はなかったとしている。「Imaginationは、事業ごとに売却されるか、かなり“値引き”されて売却されるだろう。個人的に、『MIPS』コア事業や通信用IP(Intellectual Property)『Ensigma』事業には、価値があるとは思えないからだ。実際、MIPSアーキテクチャは最近、新しい市場でデザインウィンを獲得していない」(同氏)
McGregor氏は、「ここ最近のImaginationの企業価値は、ほとんどグラフィックスコアにあったようなものだ」と続ける。これまではIntelが主にImaginationに投資してきたが、Intelは2015年にImaginationの株を手放している。
AppleがImaginationを買収する可能性もある。その他、台湾のMediaTekなど、複数の候補がありそうだ。IC Insightsのシニアリサーチアナリストを務めるRob Lineback氏は、Samsung Electronicsや中国のXiaomiなど、アプリケーションプロセッサを自社で開発しているメーカーも、買収に興味を持っている可能性があると述べる。「Imaginationの売却は、モバイル機器向けのアプリケーションプロセッサ市場に大きな影響を与えることになりそうだ。ARMのグラフィックコアを採用するメーカーや、GPUを自社開発するメーカーも増えるかもしれない」(同氏)
【翻訳、編集:EE Times Japan】
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