研究チームは、鉄コバルト合金の組成比と熱処理温度についても、その最適化を行った。鉄コバルト合金のコバルト組成が31at%(原子組成百分率)で、250℃の熱処理を行ったところ、最大の垂直磁気異方性エネルギーと磁気異方性変調効率を得られることが分かった。この結果、熱じょう乱耐性Δ0が、これまでの素子に比べて1.4倍となるMTJ素子を実現した。
電圧印加による書き込み動作によって、磁化反転が成功したか否かを判定した。この作業を繰り返し行うことで書き込みエラー率を求めた。これらの結果から、磁化が半回転する間だけ電圧を印加した時に効率よく書き込みが行われた。パルス電圧強度が1.56Vの場合、書き込みエラー率は2×10-5となった。
同じ電圧磁気異方性変調率で、熱じょう乱耐性Δ0が3分の2程度の記憶層を用いたMTJ素子だと、書き込みエラー率は10-3台にとどまった。このことから、熱じょう乱耐性を向上させることで、書き込みエラー率を低減できることが分かった。
今回の開発により、書き込みエラー率は従来の200分の1に低減することができたという。この数値は、ベリファイを一回実行するだけで、書き込みエラー率は実用レベルといわれる10-10台を実現できることになる。ベリファイの回数を削減することで、書き込み時間を短縮することができ、10ナノ秒以下でMRAMへの書き込みを可能とした。
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