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反強誘電体キャパシターから不揮発性メモリを作る方法(続き)福田昭のストレージ通信(82) 反強誘電体が起爆するDRAM革命(3)(1/2 ページ)

反強誘電体の内部に電界バイアスを加え、不揮発性メモリを作る方法を紹介する。この手法を適用して、二酸化ジルコニウムの反強誘電体キャパシターからキャパシターが試作されている。

» 2017年10月12日 10時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

反強誘電体の内部に電界バイアスを与えることの意味

 前回では、残留分極のない反強誘電体を不揮発性メモリのセルキャパシターとして利用可能にする方法を紹介した。反強誘電体の内部に電界バイアスを与えることで、分極特性曲線のゼロ電界(外部電界がゼロという意味)を例えば左に(マイナス方向に)シフトさせる。すると、外部電界がゼロのときに、2つの状態が生じる。1つは、かなり大きな残留分極のある状態。もう1つは、ごくわずかに残留分極がある状態である。

 これらの2つの状態を論理値の2つの状態(「高(1)」あるいは「低(0)」)に対応させることで、1ビットのデータを記憶できる。外部電界がゼロのときにこれら2つの状態を作れるので、不揮発性メモリとなる。

 前回の繰り返しになるが、エネルギーポテンシャルの観点から、このことを説明しよう。自由エネルギーの大小で考えると、反強誘電体では分極のない状態が、自由エネルギーが最も小さい状態に対応する。言い換えると、分極のない状態が最も安定である。安定点は1箇所しかない。

左のグラフは、反誘電体(AFE)の自由エネルギーと分極電荷量の関係。右のグラフは、外部電界と分極電荷量の関係。出典:NaMLabおよびドレスデン工科大学(クリックで拡大)

 ここで、反強誘電体の内部に電界バイアスを与えることは、自由エネルギーが局所的に低い状態を分極電荷量に関してもう1箇所、設けることにほぼ等しい。マイナスの分極電荷量が一定の地点(データの「0(ゼロ)」に相当する地点)と、分極電荷量がほぼない状態の地点(データの「1」に相当する地点)が生じる。外部電界の変化は、反強誘電体がこの2つの状態を往復することに等しい。

反強誘電体薄膜の内部に電界バイアスを与えたことによる変化(赤い曲線)。左のグラフでは、自由エネルギーの局所的な最小点(安定点)が、2箇所に増えている。マイナスの分極電荷量が一定のところが「0(ゼロ)」、分極電荷量がほぼない状態のところが「1」に対応する。右のグラフでは、外部電界がゼロのところに分極電荷量の違う2つの状態が出現している。出典:NaMLabおよびドレスデン工科大学(クリックで拡大)

 言い換えると、分極状態の安定点が「0」、非分極状態の安定点が「1」に対応する。ヒステリシス曲線を利用して、疑似的に2つの安定状態(双安定状態)を作り出しているともいえる。

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