クラウドの負荷を低減し、ネットワークの高速化を図るべく、エッジコンピューティングへの注目が高まっている。NXP Semiconductorsは、高度なエッジコンピューティングやネットワーク仮想化を実現すべくチップ開発に取り組んでいる1社だ。
クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングの境界線が曖昧になる中、NXP Semiconductors(以下、NXP)は自社の「Layerscape」シリーズで最高性能のSoC(System on Chip)を提供しようと、取り組みを加速している。
この新しいSoC「LX2160A」を用いると、ネットワークの中間(一般的にはサービスオペレーター)でネットワーク仮想化を行えるようになる他、基地局などのネットワーク機器上で高性能のネットワークアプリケーションを動かせるようになる。これは、クラウドのデータセンターにおけるコンピュータの作業負荷の削減につながる。
NXPでシニアプロダクトマネジャーを務めるToby Foster氏が、EE Timesに対して語ったところによると、同氏のチームはこの新しい高性能SoCを開発するに当たり、3つの目標を念頭に置いていたという。1つ目は、ネットワークにおいて新しいタイプの仮想化を実現すること。2つ目は、次世代のI/O機能を備えるとともに、低消費電力化を図りつつ、高度なインテグレーションと性能を実現すること。そして3つ目は、低消費電力を維持しながら、仮想ネットワークの機能と暗号のスケールを、NXPのLayerscapesシリーズの既存のSoC(「LS2088A」)の倍にすることが掲げられた。
具体的には、LX2160Aは、動作周波数が2GHzで20〜30Wの電力で動作するARMの高性能コア「Cortex-A72」を16個搭載している。また、100Gビット/秒のイーサネット(100GbE)とPCI Express Gen4(PCIe Gen4)の両方をサポートする。
NXPをはじめ、業界には、エッジコンピューティングについて「ネットワーク、コンピューティング、IoT(モノのインターネット)インフラにおいて、成長を次の段階に促すもの」と見る傾向がある。
作業負荷をクラウドからエッジに移すことで、サービスオペレーターはレイテンシ(遅延時間)の問題を解決でき、帯域幅の信頼性も得られるとFoster氏は説明した。
Linley Groupでネットワーキング担当の主席アナリストを務めるBob Wheeler氏は、EE Timesに対し「CDN(コンテンツデリバリネットワーク)など、一部のケースでは、クラウドからエッジへの移行は常に起きている」と語った上で、「モバイルエッジコンピューティングは主に、2019年に一部のサービスが始まると見られている5G(第5世代移動通信)の提供開始とともに始まるだろう」と予測した。
ネットワーク仮想化をめぐる競争は、2つの方向から中間点へと向かっている。x86陣営はデータセンターから、ARM陣営はエッジから始めているということだ。
Wheeler氏は、NXPのLX2160Aの競合製品について問われると、「主な競合製品として、ARM陣営ではCaviumの『Octeon TX』、x86陣営ではIntelの『Xeon D』が挙げられる」と述べた。NXPはLX2160Aについて、「極めて優れた電力効率と、より進化したネットワークインタフェース(25GbE、50GbE、100GbE)を実現する」と主張している。だが、2018年第1四半期にサンプル出荷が開始されるまでは、同SoCの実際の性能についてはまだ分からない。NXPの競合製品は、既に生産が開始されているという。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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