Qualcomm(クアルコム)が、NXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)の買収を正式に発表した。この買収の影響を、車載分野を中心に検証していきたい。
Qualcomm(クアルコム)が、NXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)の買収契約発表*)では、両社のCEOたちが一体感を強調していたことからも、2社の間には共生関係が構築されていることが分かる。新たに誕生する350億米ドル規模の半導体メーカーは、今後業界に大きな影響を及ぼすことになるだろう。買収後の新企業の社内業務だけでなく、特に自動車市場の競合メーカーなどへの影響が大きいとみられる。
*)関連記事:クアルコムがNXPを約5兆円で買収へ
世界自動車市場への影響は、どれくらい大きいのだろうか。今回の買収によって、自動車業界にどのような重大な変化が起こるのだろうか。
QualcommによるNXPの買収により、両社の間で衝突や重複、市場機会などの影響が及ぶ可能性がある分野としては、まず、将来の車載用SoC(System on Chip)に向けた半導体プロセス技術が挙げられる。
Qualcommは、バルクCMOSを適用したSoCの量産ベンダーとしての地位を既に確立している。それに対し、NXPは、そのバルクCMOSに競合するFD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)のサポートを表明している。
コネクテッドカーに関しては、NXPがDSRC(狭域通信)ベースのV2X(Vehicle to Everything)を推進しているのに対し、QualcommはLTEベースのソリューションを推奨しているという問題もある。
さらに、プロセッサのプラットフォームについても、Qualcommは「Snapdragon」、NXPは「i.MX」をそれぞれ持っており、これについても社内で係争が生じるのではないだろうか。車載インフォテインメント(IVI:In-Vehicle Infotainment)システムやADAS(先進運転支援システム)、自動運転プラットフォームに至るまで、多大な影響が及ぶだろう。
買収後の新企業では、機械学習の開発方法についても明示できていない。NXPのCEOであるRichard Clemmer氏は、「NXPはこれまで、自動車業界をリードする半導体メーカーとしての座を維持してきたが、今のところ、機械学習分野における技術開発は全く手掛けていない」と明かしている。
今回、QualcommとNXPの競合する技術や製品をめぐる潜在的な問題について分析することにより、対立や重複などの問題を特定していきたい。
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