今回から、「不揮発性DRAM」の実現を目指す研究開発について解説する。二酸化ジルコニウムは、その結晶構造から、工夫次第で強誘電体のような不揮発性を付加できる可能性がある。
前回までに、「二酸化ジルコニウム(ZrO2)」が反強誘電体材料になることと、強誘電体キャパシターと同様の不揮発性メモリ素子に工夫次第で利用できることをご説明してきた。
半導体メモリの世界では良く知られているように、DRAMのメモリセルは1個のセル選択トランジスタ(MOSFET)と1個の高誘電体キャパシターで構成されている。1個のトランジスタ(T)と1個のキャパシター(C)で実現する、このようなメモリセルを「1T1Cセル」と呼ぶ。
DRAMセルのキャパシター絶縁膜に求められるのは、高い誘電率と低いリーク電流である。そして高い誘電率を実現する材料として「二酸化ジルコニウム(ZrO2)」が最先端のDRAMキャパシターに採用されている(参考記事:「DRAM各社のプロセスを比較、さらなる微細化は可能か」)。
もちろん、DRAM製品のキャパシターは不揮発性ではない。そもそも、「二酸化ジルコニウム(ZrO2)」は、強誘電体ではないので、不揮発性は備えていないと考えられている。当然だろう。
ところが興味深いことに、NaMLabやドレスデン工科大学などの共同研究グループは、DRAMキャパシターに使われている「二酸化ジルコニウム(ZrO2)」の結晶構造は「正方晶(tetragonal crystal)」であり、反強誘電体である可能性が高いと指摘する。つまり、工夫次第で強誘電体のような不揮発性を付加できる、ということだ。
厳密には、DRAMキャパシターの絶縁膜は3層構造をしている。具体的には「二酸化ジルコニウム/アルミナ/二酸化ジルコニウム(ZrO2/Al2O3/ZrO2)」である。中間のアルミナ層は、リーク電流を抑えるために、挿入されている。この3層構造でも、キャパシターに強誘電体と類似の特性を持たせることができる、というのがNaMLabやドレスデン工科大学などの共同研究グループの主張である。
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