IHS Markitは「iPhone X」を分解し、BOM(Bills of Materials)を370.25米ドルと見積もった。最もコストが掛かっているのは、iPhoneで初めて採用した有機ELディスプレイを含むディスプレイモジュールの部分だ。
市場調査会社のIHS Markitは、2017年11月3日に発売されたAppleの「iPhone X」を分解し、BOM(Bill of Materials)コストを見積もった。それによると、容量64Gバイト版(販売価格は999米ドルから)のBOMコストは、370.25米ドルになるという。同じ容量の「iPhone 8 Plus」の288米ドルを上回り、歴代iPhone最高額となる。
ちなみに、Samsung Electronicsの「Galaxy S8」(64Gバイト版)のBOMコストは約302米ドルで、販売価格は720米ドル前後である。
IHS Markitでコスト・ベンチマーク・サービス担当のシニアディレクターを務めるアンドリュー・ラスワイラー氏は、プレスリリースで、「iPhone Xは史上最高額のiPhone機種であり、他社の主要モデルと比較しても小売価格が最も高い。スマートフォン業界に全く新しい価格ポイントをもたらしたといえる」と述べている。
iPhone XとiPhone 8は、アーキテクチャの観点で見ればそれほど大きな差異はない。ラスワイラー氏は、「両モデルのプラットフォーム部品は共通だが、iPhone Xのディスプレイと、顔認識機能『Face ID』を実現する『TruDepth』センシング機能が、BOMコストの差を生んでいる」と解説する。
Face IDは、スマートフォン上部に搭載した赤外線カメラで実現する。IHS MarkitでMEMS/センサー担当シニアディレクターを務めるジェレミー・ブショー氏は、「Face IDシステムは、投光イルミネータやドットプロジェクタ、赤外線カメラを使用していたMicrosoftの『Kinect』のセンシングシステムと基本機能が非常によく似ている。多くのサプライヤーが提供する部品を使用した複雑なアセンブリである」と説明する。
IHS Markitの分解によれば、赤外線カメラはソニー/Foxconn、シリコンはSTMicroelectronicsが提供しているという。投光イルミネータはTexas Instrumentsの赤外線エミッタを採用している。ドットプロジェクタはFinisarとPhilipsが製造しているとする。IHS Markitは、TrueDepthセンサークラスタのBOMコストを16.70米ドルと推定する。
iPhone Xに採用されている有機ELディスプレイ(AMOLED:アクティブマトリクス式有機ELディスプレイ)は、解像度が2436×1125ピクセルで458dpi、100万:1のコントラスト比を実現している。サプライヤーはSamsung Displayだ。IHS Markitによれば、Samsung Displayは、2017年にAppleに約6700万ユニットのフレキシブル型AMOLEDを供給する見通しだという。カバーガラス、AMOLEDパネル、搭載されている「Force Touch」センサーを含めたディスプレイモジュールのコストは、110米ドルとみられる。
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