2つ目の大きな狙いが、車載製品の開発の加速だ。マヒンドラ・レーシング・フォーミュラEチームとの技術提携において、ルネサスは、自動車開発向けの包括的プラットフォーム「Renesas autonomy」をベースに、フォーミュラE用レーシングカーと量産車のPoC(Proof of Concept:機能の実用化に向けた検証工程)の開発を進める。
Renesas autonomyはルネサスが2017年4月に発表したコンセプトで、クラウドサービスからセンシング、車両制御まで、エンド・ツー・エンドで関連技術を提供するためのオープンな開発プラットフォームだ。
ルネサスは、このRenesas autonomyを使って実車を開発できるかどうかを試したいのである。
吉岡氏は、「フォーミュラEというのは、単なるレースではなく、EVの機関システムの性能を競い合う技術コンテストの側面も持ち合わせている。しかもレースは14戦あり、そのたびにマシン(レーシングカー)をチューニングして性能をアップデートしていく。われわれから見れば、それは開発行為そのものだ」と語る。
今回の提携によってルネサスは、Renesas autonomyベースで開発した車載向け半導体やソフトウェアをレーシングカーに搭載し、性能を評価することができるようになる。レーシングカーとはいえ「実車で検証できる」ことの意義は極めて大きい。吉岡氏は「もちろん、自社でも開発中の製品のテストや評価は行ってきた。PoCにはさまざまなやり方があるが、われわれのような半導体メーカーが実車を使ってPoCを進めるというのは難しい。実車で評価でき、しかもその結果を毎月のように得られるというのは、非常に魅力的である」と強調する。
一般的にガソリン車の開発期間は5年だが、EVは2年といわれている。Time to Marketがスマートフォンなどの民生機器並みに短く、それ故変化も速い。「開発における新しいコンセプトも、そのスピードに合わせなければならない」と吉岡氏は語る。ルネサスにとっては、レースのたびにアップデートされていくレーシングカーは、開発中のデバイスの性能を評価するには、うってつけの試作ともいえるのだ。
さらに、Mahindraは自動車の開発において「Race to Road(レースから道路へ)」というコンセプトを持っている。これはレーシングカーに採用した技術を実車にも適用するというものだ。つまり、レーシングカーに搭載されたルネサスの技術は、いずれ量産車にも搭載される可能性が極めて高くなる。
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