京都大学医学部付属病院 先端医療機器開発・臨床研究センターの種石氏は、機械学習を創薬に応用することに大きな期待を抱いていると語る。
背景にあるのは、製薬業界が本質的に抱える課題だ。現在、新薬の開発には、1品目当たり約1200億円の費用と約10年以上の時間がかかっているという。それにもかかわらず、医薬品開発の成功確率はわずか2万5000分の1以下だ。「極めてハイリスク、ハイリターンの世界」だと種石氏は述べる。
そこで注目されているのが計算創薬だ。基本的に創薬というのは、病気の原因となる生体内タンパク質に対して、結合する化合物を見つけることである。だが、化合物は何万種にも上るため、実験室で生成した“手持ち”の化合物から、有効な化合物が見つかる保証はない。
計算創薬では、実物の化合物ではなくバーチャルに生成した化合物を使う。ターゲットとなるタンパク質をうまく結合するか、細胞内に入った時の動きはどうか、といったことを、実験ではなくシミュレーションで検証することができる。
種石氏が期待を寄せるのは、この計算創薬にディープラーニングを応用することである。実は種石氏らは、既に5年以上前から取り組みを進めてきた。「タンパク質と化合物の結合パターンを膨大なデータから学習し、あるタンパク質に対して結合する化合物、つまり薬の候補となるような化合物を予測する」という方法を試してきたという。もともとスーパーコンピュータ(スパコン)の「京」を使っていたが、その時は25万件の相互作用のデータを学習するのが精いっぱいだったと種石氏は語る。
それが、Xeonサーバで学習させた結果、400万件のデータを学習できたという。豊富なシステムメモリに加え、ソフトウェアをIA(Intel Architecture)に最適化することで、これほどの量の学習が可能になったとする。
種石氏は、「計算創薬を支えるAIシステムが、(試用段階ではなく)“現実に使えるもの”として導入されていることが重要なポイントだ」と結んだ。
 おうちにやってくる人工知能 〜 国家や大企業によるAI技術独占時代の終焉
おうちにやってくる人工知能 〜 国家や大企業によるAI技術独占時代の終焉 心を組み込まれた人工知能 〜人間の心理を数式化したマッチング技術
心を組み込まれた人工知能 〜人間の心理を数式化したマッチング技術 Intel方針転換の真意を探る
Intel方針転換の真意を探る “新たなうねり”となる5G、インテルが目指す未来
“新たなうねり”となる5G、インテルが目指す未来 Intelが5Gモデムを発表、モバイルでの返り咲き狙う
Intelが5Gモデムを発表、モバイルでの返り咲き狙う 関心高まるRISC-V、Armやx86の代替となり得るか
関心高まるRISC-V、Armやx86の代替となり得るかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング