「AIとはソフトの進化」 Intelが取り組みを強化:創薬での応用も始まっている(2/2 ページ)
京都大学医学部付属病院の種石慶氏
京都大学医学部付属病院 先端医療機器開発・臨床研究センターの種石氏は、機械学習を創薬に応用することに大きな期待を抱いていると語る。
背景にあるのは、製薬業界が本質的に抱える課題だ。現在、新薬の開発には、1品目当たり約1200億円の費用と約10年以上の時間がかかっているという。それにもかかわらず、医薬品開発の成功確率はわずか2万5000分の1以下だ。「極めてハイリスク、ハイリターンの世界」だと種石氏は述べる。
そこで注目されているのが計算創薬だ。基本的に創薬というのは、病気の原因となる生体内タンパク質に対して、結合する化合物を見つけることである。だが、化合物は何万種にも上るため、実験室で生成した“手持ち”の化合物から、有効な化合物が見つかる保証はない。
計算創薬では、実物の化合物ではなくバーチャルに生成した化合物を使う。ターゲットとなるタンパク質をうまく結合するか、細胞内に入った時の動きはどうか、といったことを、実験ではなくシミュレーションで検証することができる。
機械学習を創薬に応用する(クリックで拡大)
種石氏が期待を寄せるのは、この計算創薬にディープラーニングを応用することである。実は種石氏らは、既に5年以上前から取り組みを進めてきた。「タンパク質と化合物の結合パターンを膨大なデータから学習し、あるタンパク質に対して結合する化合物、つまり薬の候補となるような化合物を予測する」という方法を試してきたという。もともとスーパーコンピュータ(スパコン)の「京」を使っていたが、その時は25万件の相互作用のデータを学習するのが精いっぱいだったと種石氏は語る。
それが、Xeonサーバで学習させた結果、400万件のデータを学習できたという。豊富なシステムメモリに加え、ソフトウェアをIA(Intel Architecture)に最適化することで、これほどの量の学習が可能になったとする。
計算創薬がもたらす経済効果(クリックで拡大)
種石氏は、「計算創薬を支えるAIシステムが、(試用段階ではなく)“現実に使えるもの”として導入されていることが重要なポイントだ」と結んだ。
- おうちにやってくる人工知能 〜 国家や大企業によるAI技術独占時代の終焉
今回のテーマは「おうちでAI」です。といっても、これは「AIを自宅に実装すること」ではなく、「週末自宅データ分析およびシミュレーション」に特化したお話になります。さらに、そうなると避けては通れない「ビッグデータ」についても考えてみたいと思います。そして、本文をお読みいただく前に皆さんにも少し考えていただきたいのです。「ビッグデータって、いったいどこにあるのだと思いますか?」
- 心を組み込まれた人工知能 〜人間の心理を数式化したマッチング技術
「マッチング」と聞くと、合コンやお見合いなどを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、もちろん、それだけではありません。今回は、ゲーム理論、オークション理論、行動経済学を「マッチング技術」として解説します。実はこれらの技術は、“人間の心理を数式として組み込むこと”に成功していて、幅広い分野で成功事例がみられる、とても興味深く珍しいAI(人工知能)技術なのです。
- Intel方針転換の真意を探る
2016年、Intelはモバイル事業からの撤退を決めるなど方針転換を行った。そうした方針転換の真の狙いを、Thunderbolt用チップ、そして、7年前のTSMCとの戦略的提携から読み取ってみたい。
- “新たなうねり”となる5G、インテルが目指す未来
Intel(インテル)は2017年3月2日、最新の取り組みに関するプレス向けセミナーを開催し、IoT社会に向けて求められる5G(第5世代移動通信)の動向について説明を行った。
- Intelが5Gモデムを発表、モバイルでの返り咲き狙う
Intelは「CES 2017」で5G(第5世代移動通信)モデムを発表した。2017年後半にもサンプル出荷を開始する予定だという。
- 関心高まるRISC-V、Armやx86の代替となり得るか
2017年11月28〜30日にかけて、米国シリコンバレーで「7th RISC-V Workshop」が開催された。オープンな命令セットアーキテクチャ「RISC-V」は、Arm系やx86系の命令セットの代替となり得る技術として確実に台頭してきている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.