続いて登壇したのは、ADIプレシジョンプロダクツのテクノロジーディレクターで、フェローを務めるColin Lyden氏。「最高精度のコンバーターを実現する基礎技術」というテーマで、高精度D-AコンバーターICやSAR型A-DコンバーターICなどに関する基本技術、同社が提供する製品ファミリーの方向性、などについて講演した。
Lyden氏によれば、システム設計者が気にする点は、メインのシグナルパスにおけるスプリアスの影響だという。この課題に対して、抵抗ラダーに基づいた高精度D-AコンバーターICを用いるのが有効である。ADIは、抵抗スイッチのアレイをR2Rラダーに置き換えた。14ビットの分解能を得るのに14個のR2Rラダーで済むという。さらに、薄膜抵抗マッチング技術やオンチップキャリブレーション技術を採用することで、1ppmレベルの高い精度を実現している。
次に、SAR型A-DコンバーターICの精度について述べた。精度を制限する要因として、内部のコンデンサーアレイのミスマッチなどを挙げた。これらの問題を解決するために同社は、製造したICを工場内で評価し、デジタル補正した値を内部のOTP(On Time Programmable)メモリなどに書き込んで出荷しているという。
DNL(微分非直線性)誤差を取り除くために有用なDither(ディザー)の効果も説明した。評価時に被測定物のはんだ付けに不具合があったため、DNLやINL(積分非直線性)の誤差は大きかった。ところが、Ditherをオンにするとその誤差は改善された。特に、DNLでは極めて大きな効果が得られたという。もちろん、はんだ付けを正しく行うとDNL誤差はなくなった。
最後に、私見と前置きしながらも開発の方向性について、データコンバーターを構成するさまざまな機能や回路ブロックを1つのパッケージやモジュールに集積した、高性能かつ高信頼の製品開発に取り組んでいくと述べた。
例えば、ヘルスメーターオンチップ「ADuCM350」は、分解能16ビットでサンプルレート160kサンプル/秒のA-Dコンバーターや±0.2%精度の電圧リファレンスおよび、12ビットD-Aコンバーターを備えたアナログフロントエンド(AFE)などを集積している。
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