高度なIoT(モノのインターネット)社会を実現するために欠かせないのが、優れたアナログ技術である。「アナログ・グル」と呼ばれるアナログ回路技術者が、難しい課題を解決するための技術などについて語った。
アナログ・デバイセズ(ADI)は、「アナログ・グルとの集い 2017〜The Toughest Design Issuesを解決する技術とは〜」と題したセミナーを、2017年12月5日に東京都内で開催した。「アナログ・グル」と呼ばれる極めて優秀なアナログ回路技術者が、それぞれ専門分野の視点から、アナログ技術および製品の進化や回路設計時に考慮すべきポイントなどについて語った。
高度化するデジタル技術の性能を最大限に活用するためには、優れたアナログ技術が欠かせない。この傾向は今後も一層強まる見通しである。一方で1980年代以降、多くの技術者がデジタル分野に向かい、アナログ技術者は減少している。高度なIoT社会を実現していくためにも、アナログ技術者の育成はこれからの大きな課題となっている。
アナログ・グルとの集いは、「日本の製造業を再び強くしたい」という強い思いから、旧リニアテクノロジーの主催で2013年に始まった。アナログ・グルと直接コンタクトできる場を設けることで、優れたアナログ技術者の育成につなげようとする狙いもある。ADIは、2017年にリニアテクノロジーを統合し、名実ともに高性能アナログ半導体のリーディングカンパニーとなった。今回は新生ADIが誇る4人のアナログ・グルが登壇した。
最初に登壇したのは、ADIオートモーティブビジネスユニットでディビジョンフェローを務めるMichael Judy氏。「高性能慣性センサー:センシングから測定まで」をテーマに講演した。Judy氏は、MEMS慣性センサー需要をけん引している主な応用市場として車載用途や民生機器用途を挙げた。エアバックシステムやナビゲーションシステム、ゲーム機器、セルラーフォンなどに搭載され市場規模が拡大する。
Judy氏は、車載や民生機器に続き、第3の波として期待している市場が産業分野だという。「MEMS慣性センサー需要は、年平均11%成長しており、この傾向はこれからも続く。既に車載と民生機器向け需要は成熟しており、今後の成長エンジンは産業用途である」と話す。
続いて、MEMS加速度センサーやジャイロセンサーの動作原理や種類、ウエハー加工技術、パッケージ技術も含めた製造時の注意点などについて解説。用途によって許容される出力のばらつき、同相誤差や直交位相誤差とその補正方法などにも触れた。特に「補正処理」の重要性を繰り返し述べた。
さらに、ADIが提供する主な高性能MEMS慣性センサー製品について紹介。ウェイクアップモードで消費電流270nAを達成したMEMS加速度センサー「ADXL362」の他、振動検出に向けた「ADXL1002」、ノイズやドリフトが小さい「ADXL354/355」などを新たに用意した。
最後に、慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)センサーの進化について述べた。同社は、高精度のジャイロセンサー、加速度センサー、磁気センサー、圧力センサーなどを複数軸で組み合わせたIMUセンサー市場でも先導的役割を果たしている。
講演では、IMUとして「ADIS16470/16475/16477」と「ADIS16490/16495/16497」の2種類について、製品の特長などを説明した。
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