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優れたアナログ技術が、高度なIoT社会を支えるアナログ・グルが語る(4/4 ページ)

» 2017年12月11日 14時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]
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熱電対を正しく使う

Robert Dobkin氏

 最後に登壇したのは、ADIでLinear Technology CTO(最高技術責任者) Emeritusを務めるRobert Dobkin氏。「熱電対の長所と短所」をテーマに、温度計測に広く用いられている熱電対を用いて、正しい計測値を得るための方法、熱電対効果とその抑制方法などについて解説した。

 熱電対は、起電力の電圧を計測して温度の差を測定するデバイスである。2種類の異なる金属を接合し、両側の接点に温度差が生じると電圧が発生して電流が流れる原理を応用した。使用する材料によって起電力の大きさやリニア特性などが異なるため、用途に応じてさまざまな特性を持つ熱電対が用意されている。クロメルとアルメルを組み合わせた「タイプK」と呼ばれる熱電対は、温度と熱起電力の関係が他の材料に比べて直線性に優れているため、工業用途などで多く用いられているという。

材料によって異なる起電力の大きさやリニア特性 出典:ADI

 熱電対を用いて測定する時の注意点をいくつか述べた。温接点がビードタイプだと測定面と接地する面積が小さくなる。このため、より正確な温度を測定しようとすれば、ビードに効率よく熱を伝導させるとともに、空気の流れなどによって放熱しにくいように周りを囲むなど工夫が必要だという。

 使用する材料によって生じる、熱電対効果も十分に考慮しておく必要があることを強調した。これがノイズとなって誤差が生じ、測定エラーにつながるケースもあるという。その一例として電子回路に用いる面実装タイプの抵抗を挙げた。セラミック抵抗や薄膜抵抗、巻き線抵抗などその種類によって、発生する熱電対効果は異なるという。熱電対効果を抑える対策として、2つの抵抗を隣接する形で設置することで、その影響をキャンセルすることができるという。

 最後に、熱電対用マイクロパワー冷接点補償器「LT1025」やマルチセンサー対応のデジタル温度測定IC「LTC2983」について、その特長などを紹介した。LTC2983は、3個の24ビットΔΣ型A-Dコンバーターや各種センサーに対応する励起回路および、ロジック回路をワンパッケージに集積している。特に、励起電流源は電流反転することによって、抵抗性センサーの熱電対効果を取り除くことができるため、理論上のセンサー出力により適合したデータを得ることができる、とDobkin氏は語った。

LTC2983の回路ブロックと内部写真 出典:ADI
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