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サーバ、スマホ、そしてIoTで高成長を維持! 電機/半導体業界2018年展望大山聡の業界スコープ(1)(2/2 ページ)

» 2018年01月23日 11時30分 公開
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最大の半導体需要はスマホ向け

 スマートフォン(以下、スマホ)の生産台数は、2016年が約14億台、2017年は約15億台と推定され、台数ベースでの成長は1ケタに留まっている。ただし1台当たりのDRAMおよび、NANDフラッシュの搭載容量が増えており、メモリ市況活性化のもう1つの要因となっている。スマホ向けの半導体出荷は、半導体出荷全体の4分の1を占めており、単独の機器市場としては今やPCに代わって最大の半導体市場となっている。

 かつて、PCが世界半導体需要のけん引役だった当時、PCの台数成長と1台当たりのメモリ搭載容量の増加がメモリ需要の増加を支えていた。より高速なCPUとより大きなメモリ容量が求められていたPCは、約3年でスペックが陳腐化していたため、買い換えサイクルも今より短かった。一方で、スペックの進化がかつてほど重要視されなくなった今では、2011年をピークに台数成長もマイナスに転じている。

 代わって現代のスマホは、約2年でスペックが陳腐化しており、CPUの性能もメモリの容量も常に進化している。PCに比べて使用目的やアプリケーションの種類が格段に増えており、1日当たりのユーザーの平均使用時間もPCよりはるかに長い。「スマホがないと落ち着かない」「スマホがないと不安でしかたがない」といったいわゆる「スマホ依存症」の増加が社会現象の1つとして問題視されているのが現状である。

 この社会現象は、言い換えれば「大半の人々がネットに接続していることの重要性、利便性を認識している」ということでもある。「スマホ依存症」を容認するわけではないが、われわれの生活や仕事にここまで影響を与えているスマホは、スペックに対する期待や要求が当面進化し続けることが予想され、結果として今後も半導体需要の中心として注目されることになる、と筆者は考えている。

サービス事業の重要性

 半導体市場の現状を整理すると、次のようになる。

  • 最も半導体を消費するスマホの需要が堅調で、サーバ/データセンターを中心とするクラウドのインフラ向け需要が高い成長率で推移している
  • いずれもメモリ需要が伸びていて供給が追いつかず、メモリ単価が下がらないために高い成長が維持されている
  • 上記2つの動向はことし2018年も継続される可能性が高い

 これらが2018年エレクトロニクス業界展望および半導体業界展望として筆者が申し上げたいことである。

 さらに追記するなら、この業界の中心にいるのがAmazon、Microsoft、IBM、Googleといったクラウドインフラ市場を代表する各社で、彼らはサーバ/データセンター向けの半導体需要を創出すると同時に、ユーザーがクラウドサービスを活用しやすくするためのアプリケーションソフトも多数提供している。IoT(モノのインターネット)の普及が加速すれば、ネットに接続される「モノ」が増えて、これら大手企業に限らず、新しいサービスを実現する企業が多数出現するだろう。これからは「ユーザーに利便性を感じさせる新しいサービス」がIoTの活用よって付加価値を生み出すことは間違いないのだ。

 エレクトロニクスおよび、半導体業界の展望を述べることが本稿の主旨ではあるが、ハードウェアにばかり気を取られず、昨今の動向が「数々の新しいサービスの実現によって活性化している」ということをエレクトロニクス業界でも認識しておく必要がある。サービスは製造業の仕事か、などと言っている場合ではない。IoTの普及によって、不要になる作業や資産も出てくる以上、今まで自社が生産していた製品の需要が減少する可能性もあるのだ。

 筆者はこれまでさまざまなIoTの活用事例を見てきたが、残念ながら日本はIoTに関しては他国に後じんを拝しており、日本発のIoTサービスが非常に少ないのが現実である。「誰かがIoTを活用したサービスを考案したら、そこに必要な部品やシステムを供給すればよい」という受け身な姿勢が多く、具体例がなかなか実現しない。事実、大手クラウドインフラ企業、大手スマホメーカー、この中に日系企業の名前は見当たらない。唯一、半導体だけは東芝がクラウドインフラやスマホ向けにNANDフラッシュを供給しているが、同社はこのメモリ事業を売却しようとしている。この業界は、複数の米系企業とSamsung Electronicsに牛耳られている、と言っても過言ではないのだ。

 やや勇み足っぽい内容になってしまったが、活性化しているエレクトロニクス業界の現状について記事を書いている際に、日系企業がほとんど関与していないことが気になったため、このような締めくくり方になってしまった。

 IoTを活用したサービスについては、日系各社の間でもっと議論してもらいたいし、筆者としてはそのお手伝いも喜んでさせていただきたい、と願っている。

筆者プロフィール

大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表

 慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。

 1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。

 2010年にアイサプライ(現IHS Markit Technology)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。

 2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。


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