東京大学らの研究グループは、トポロジカル磁気構造体を持つ化合物「MnGe(マンガンゲルマニウム)」が、磁場をかけると大きな熱電効果(ゼーベック効果)を示すことを発見した。MnGeの磁気モノポールが生み出す巨大な仮想磁場のゆらぎが、その機構と密接に関係しているという。
東京大学工学系研究科の藤代有絵子大学院生と金澤直也助教、理化学研究所創発物性科学センターの十倉好紀センター長らによる研究グループは2018年1月、トポロジカル磁気構造体をもつ化合物「MnGe(マンガンゲルマニウム)」が、大きな熱電効果(ゼーベック効果)を示すことを発見したと発表した。また、MnGeの磁気モノポールが生み出す巨大な仮想磁場のゆらぎが、その機構と密接に関係していることも、他グループとの共同実験などにより明らかとなった。
廃熱などから電気を取り出す熱電効果は、環境に優しい発電方法として注目されており、その効率を高めるための研究も進められている。特に、トポロジカル磁気構造体が電子と結合すると、固体中に発生する仮想磁場が電子の運動に影響を与え、さまざまな現象を引き起こすことが分かっている。ただ、熱電効果についてはこれまで明らかにされていなかった。
そこで研究グループは、磁気構造のトポロジーを用いて熱電変換の効率を高めるという新たな原理を提唱した。MnGeに磁場をかけると従来の金属化合物に比べて、1桁大きい熱電効果を示すことを発見した。この機構には、MnGeに存在する磁気モノポールと反モノポールの対消滅が深くかかわっている可能性を明らかにした。
これらを検証するため実験も行った。この結果、観測された巨大な熱電効果は、磁気モノポールの対消滅に伴う磁気揺らぎが密接に関与していることが分かった。電子が固体中を流れるときに特殊な散乱を受けることで大きな熱電効果が発現する。この時の磁気抵抗を測定すると、大きな異常が見られた。観測した熱電効果は、この異常な磁気抵抗の大きさと強い相関関係があることが分かった。このことから、大きな熱電効果の起源は、磁気モノポールの仮想磁場の揺らぎに起因していると判断した。
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