東京大学、産業技術総合研究所(産総研)、物質・材料研究機構(NIMS)らの研究グループは、有機半導体インクを用いた印刷手法で、膜厚が15nm以下の2次元有機単結晶ナノシートを10cm角以上の大きさで作製することに成功した。高移動度と低接触抵抗を両立した有機半導体を実現することができる。
東京大学大学院新領域創成科学研究科の竹谷純一教授らによる研究グループは2018年2月、有機半導体インクを用いた印刷手法で、膜厚が15nm以下の2次元有機単結晶ナノシートを10cm角以上の大きさで作製することに成功した。
研究グループは、簡便な印刷方法で分子層数を制御した2次元有機単結晶ナノシートを大面積に製造するため、新たに合成した有機半導体材料「C8-DNBDT-NW」を有機溶媒に溶かしたインクを用いた。
溶媒の蒸発によって有機半導体分子が析出する速度や、基板の移動速度を精密に制御することで、膜厚が15nm以下という、数分子層に相当するC8-DNBDT-NW単結晶薄膜の作製に成功した。有機半導体を溶かしたインクは、一軸方向に乾燥させる仕組みのため、あらゆる基板に適用することが可能だという。
研究グループは、分子層数の異なる2次元有機単結晶ナノシートを活性層に用いた電界効果トランジスター(FET)を試作し、電荷移動度と接触抵抗を測定した。この結果、2分子層有機単結晶トランジスターで、移動度は13cm2/Vs、接触抵抗は47Ωcmを達成していることが分かった。接触抵抗の数値は有機半導体として世界最小レベルだという。
また、2分子層有機単結晶ナノシートを用いたFETで、遮断周波数20MHzと有機半導体では最高レベルの数値を達成した。同デバイスのゲートとドレイン電極をつないだダイオードは、最大29MHzの交流信号を直流電圧に変換する整流素子として動作することも確認した。この特性はRFIDタグの給電に対応可能なレベルにあるという。
研究グループによれば今回の研究成果は、物流管理用の無線タグや、生体信号をモニターするヘルスケアデバイス、ガスや生体細胞の吸着を検知するセンサーなどへの適用が期待できるという。
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