東京大学と東北大学の研究グループは、乱れが極めて少ない2次元超伝導体に磁場を加えると、2つの特殊な量子状態が現れることを発見。磁場による量子状態の制御にも成功した。【訂正】
東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター・物理工学専攻の岩佐義宏教授、同研究科物理工学専攻の斎藤優大学院生、東北大学金属材料研究所の野島勉准教授らによる研究グループは2018年2月22日、乱れが極めて少ない2次元超伝導体に磁場を加えると、2つの特殊な量子状態が現れることを発見したと発表した。
研究グループは、2次元物質と呼ばれる層状窒化物の塩化窒化ジルコニウム(ZrNCl)と二硫化モリブデン(MoS2)の単結晶を、スコッチテープ法により劈開(へきかい)して厚みを20nmとした。その表面に電気二重層トランジスター(EDLT)を作製した。EDLTは、一般的な電界効果トランジスター(FET)の絶縁層をイオン液体に置き換えたものである。
EDLT構造にすることで、従来の蒸着法などで作製した超伝導薄膜に比べて、不純物や欠陥といった乱れの影響が極めて小さく、厚みが1〜2nmの2次元超伝導を、ZrNClとMoS2の表面に実現することができたという。
さらに、作製した2次元超伝導体に磁場を加えて、磁気抵抗の温度依存性を測定した。そうしたところ、オン(超伝導状態)からオフ(絶縁体状態)の間に、「量子金属状態」と「量子Griffiths状態」が現れることを発見した。また、これら4つの量子状態を磁場によって連続的に制御することにも成功した。
研究グループは、今回の研究成果が、新たな高結晶性2次元超伝導体の研究における技術基盤になるとともに、超伝導素子や超伝導集積回路など最先端ハードウェアを開発する上で、重要な知見になるとみている。
【訂正:2018年3月5日12:00 当初の記事では「超電導」と表記しておりましたが、「超伝導」の誤りです。お詫びして訂正致します。】
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